世界自然遺産・白神山地の麓に位置する秋田県藤里町。
2021年度は、藤里町を拠点に地域活性化に取り組む「特定非営利活動法人ふじさと元気塾」を
支援団体として、地域課題×デジタルイノベーションの可能性を探究、実践しました。
きれいな空気、きれいな水、天空のような棚田、
満天の星空、野鳥のさえずり、
ゲンジボタルが飛び回り、清らかな水の渓流、
凛とした冬の空気など、
五感を通して里山の四季を体感することができます。
いつもの日常が 誰かの体験に。
秋田県内で最も人口減少が進む藤里町。2010年に誕生したふじさと元気塾は、高齢化に悩む住民を元気にするため、ホタル生息地の環境保全活動や棚田の保全などに取り組んできました。近年は、粕毛地域の農家民宿や大学生グループとの協力を核に、関係人口の拡大を図る取り組みに注力しています。
新たな地域活性化のあり方を模索
ふじさと元気塾の展開する「農家民宿ネットワーク」「空き家を活用した拠点施設」「里山の資源を活かした各種体験プログラム」「地域内外のコミュニティづくり」を中心に、デジタルテクノロジーの活用可能性を検討・導入し、アフターコロナ(Withコロナ)にも対応した新たな地域活性化のあり方を模索しました。
活動前半においては、「デジタル技術の活用」の手前の段階として、ビジョンや取り組みの方向性づくり、持続可能な事業モデルづくり、地域内の関係性を踏まえた体制づくり、資金調達をテーマとしました。
リアルな体験やつながりが地域の大切な価値であることを改めて共有するとともに、同時に、デジタル技術の活用が、リアルの価値を増幅させることや、運営団体や利用者の負荷を下げることも認識しながらの取り組みを進めました。
活動後半においては、前期の実施内容を土台に、「デジタル技術の活用」の具体的な導入を進めていきました。
同時に、空き家を活用した一棟貸し施設「南白神ベース」の新規オープンを経て、導入する技術の実証を行いました。
ふじさと元気塾の状況を踏まえ、「比較的導入ハードルの低い安価な技術の活用からスタートすること」を重視。また、「導入後に団体自身で運用できるためのナビゲーションと体制づくり」を進め、団体のデジタルリテラシーの底上げを図りました。
空き家を活用した拠点施設
集落の空き家をリノベーションした一棟貸し施設「南白神ベース」を、2022年10月8日にオープンしました。
コンセプトづくりから改装準備、デジタル技術の活用まで、地域の方々とともに様々な協議を進めてきました。
宿泊のほか、ワーケーション利用や、地域の食材を用いたピザづくり、マウンテンバイク、集落を一望する展望台ガイド等様々なアクティビティも体験できます。
▼南白神ベース
https://www.minamishirakami.com/
持続可能な取り組みへ
1年間の支援終了から半年ほどを経て、フォローアップ研修を実施しました。
まちづくり元気塾終了後も継続的に活動を展開されていることをご報告いただき、今後に向けた課題と解決の方向性について協議を行いました。
短期的なデジタル技術の導入にとどまらず、持続可能な運用を実現するための団体内での学習プロセスや、学生インターン等の若手人材活用、集落ぐるみでの受け入れ体制とデジタルリテラシー向上等、未来に向けた活動プランを明確化しました。
参加者からひとこと
ふじさと元気塾 藤原 弘章理事長
まちづくり元気塾での議論を通じて、地域の空き家を活用した一棟貸し施設「南白神ベース」を無事オープンすることができました。今後は南白神ベースや自分たちの身の丈に合ったデジタル技術をうまく活用しながら、藤里の魅力をより多くの方に届けられるよう取り組んでいきたいです。
まちづくり
パートナーから
未来の里山がここにある
丑田 俊輔氏
ふじさと元気塾や粕毛集落の皆さまの溢れるエネルギーに、大変元気をいただきました。
小さな集落に集積する農家民宿群を土台に、一棟貸し施設「南白神ベース」の新規開設や、集落の里山の手入れと展望台づくりまで、とにかく行動し続けた1年間でした。デジタル技術に関しても、"おもちゃ"のように多世代で遊び倒してみることからはじまり、次第に自分のものとしていく様子を目の当たりにしました。
もともとの土着でアナログな取り組みに、無理なく使えるテクノロジーがそっと添えられていくことで、多世代や地域内外がつながり、未来の里山像が立ち現れていくように感じました。