@「2018年度支援団体からの活動報告」
取り組みの成果や悩みを共有し、課題解決の糸口を探ろう。
支援後の実践や新たな課題をパートナーたちが検証。
「マスターコース」は、まちづくり元気塾に参加した方々が一堂に集まり、日頃の取り組みの成果や悩みを共有し、新たなネットワークづくりを行いながら課題解決の糸口を見つけていく「集合研修型」の元気塾です。「マスターコース2019 in仙台」には、2018年度にまちづくり元気塾が支援した4団体をはじめ計7団体15名、まちづくりパートナー7名が参加。さらに、まちづくりに関わる若者の団体から2団体3名が加わりました。
前半では、これまでまちづくり元気塾が支援した団体より、支援終了後の活動について報告がありました。「宮古観光創生研究会」はゲストハウスの実現について、「ふじさと元気塾」は農家民宿6軒の営業開始について、それぞれ報告しました。「柳橋きらり塾」からは、いったん動き出した農村レストランの運営で器材面などの問題が生じていると報告されました。
東日本大震災の被災地域で活動する「ままりば」及び「まざ〜らいん」からは、取り組みの持続性や地域での存在感を高めるため、経済的な自立を目指し、商品開発や販路拡大に尽力しているとの報告が。これに対して菊池氏からは肩の力を抜き「脱力的」に取り組むことの大切さについてアドバイスがありました。
「勝常区環境保全会」からは、当初想定しなかった地域の女性の参画が活発化し、地域の新しい祭りである収穫祭の実現に大きな力となったとの報告も。「坂井活性化実行委員会」は、まちづくり元気塾を契機に交流が始まった大学の教員・学生グループと、地域の伝統芸能関連グループが一緒になって、新規イベントなどの成功につながったと報告しました。
役重氏はこういった「地域への新しい力の導入」を高く評価。さらに、若い人の受け入れには、地域の側できちんとした考え方を持って体制を作り、若者と両思いの関係を結ぶようアドバイスしました。
長く活動するためのコツなどについて、参加者相互の意見交換も活発に行われました。
A「全員参加の元気塾会議」
まちづくりに共通する悩みを「若者」をキーワードに読み解く。
「地域から」と「若者から」、双方向の視線で地域を見つめよう。
後半は「若者との交流を通じたこれからの地域づくりについて」をテーマに、これまでの参加団体や大学生などの参加者全員で情報提供・意見交換を行いました。
冒頭、アドバイザリーボード座長の岡ア氏が「地域で活動する方々と地域に目が向いている若者の双方が集っている、この絶好の機会に、両者の視線で地域や自分たちの活動を見つめ直してほしい」と期待を込めて語りました。
引き続き男鹿市地域おこし協力隊員の伊藤氏と、秋田県内の大学生110名ほどが活動する団体「ARC」からの参加者が、活動事例をプレゼンテーションしました。
「ARC」創設者でもある伊藤氏からは、地域にとって若者の役割とは何か、ずっと思い悩んでいた。しかし、試行錯誤を続けるうちに「足りないものを補うよりも、地域の自立を促し、自ら進めるよう背中を押すのが大切」ということに気づき、「今はもう迷いはない」とのお話が。「ARC」のメンバーは世代や育った環境によって異なる視点を持つ人とのふれあいは、良い形で地域に刺激を与えると指摘。若者が貢献できるのは、世代間交流・地域間交流など「ふれあいを通じた地域活性化」ではないか、との考えを述べました。
意見交換に移ると、各団体から若者・学生の受け入れについての事例紹介や質問が相次ぎ、「ふじさと元気塾」からは、若者の受け入れを「ARC」の学生との交流を通じて実現できたおかげで、首都圏の大学との連携が進んでいると報告がありました。「柳橋きらり塾」は、橋立氏と共に柳橋地区に入った学生が地元でも忘れられていた郷土料理や行事を粘り強く拾い続け、そのうちに住民にも地元に対する誇りがよみがえってきた、というエピソードの紹介がありました。
橋立氏は「農山村には、長年鍛えられた『生活の技』があり、若者がそれらと出会うと驚きとリスペクトが生まれる。すると地域の方々も嬉しくなる。それがまちづくりの新しい根っこになる」とコメント。「ふじさと元気塾」の取り組みに対して、菊池氏は「いまや『藤里地区は若者交流の先進地になった』と言える。ノウハウを求めて、各地のリーダー的人材が藤里地区を訪れるなど、さらなる活性化が期待できる」と述べました。これらの意見交換を通じて、これまで学生や若者との交流が乏しかった団体からも、受け入れに積極的な意見が飛び交いました。
自らの地域を大切にすることが若者を惹きつけ、交流を広げる。
意見交換が続く中、柳井氏から「学生や若者の活動では、これで良いと決めつけず、常に新しいニーズを把握し、切り口を変えていってほしい」との助言がなされました。これに対して「ARC」の学生は「活動のあり方を含めて、学生が社会人と共に歩む意義を常に考え続けたい」と回答。寺川氏は「時には活動に『少し高いハードル』を設定してみてほしい。皆さんの地域や団体には底力がある。その底力を信じて、取り組んでほしい」とエールを送りました。志賀氏は「地域の風土を物語るような料理や芸能、景観を大事にするほど、地域の個性は際立つ。個性を保っていれば、よそから来た人がほめてくれて、さらに新しい魅力、別の面白さまで見つけてくれる」と述べました。
締めくくりに、岡ア氏から参加者全員に対し、「いまの若者は、物的な所有欲より、自分自身の存在を認めてもらいたい気持ちが強い。しかし、近年は特に社会の中核で経験と研鑚を積み重ねた方々とふれあう機会が少なくなり、若者は孤立している。歴史や伝統技術を大切にし、世代や性別の違いを尊重し合って共存できる『地域』には、大いに若者を惹きつける魅力があり、価値があるはずだ。地域を大切にしながらの行動こそが、若者を地域に近付け、育てていく力になるのではないか。若者も地域の方々も、その事を考え続けてほしい」とのメッセージが送られました。
岡ア氏のメッセージは参加者に大きな拍手で迎えられ、マスターコース2019は盛況のうちに幕を閉じました。