@「2017年度支援団体活動報告」
支援後の成果や、新たに生じた課題を共有するために。
●支援後も広がり、深まる取り組みをパートナーが再チェック。
「マスターコース」は、これまでにまちづくり元気塾に参加した方々が一堂に集い、悩みの共有やネットワークを構築しながら、課題解決の糸口を見つけていく集合研修型の元気塾です。
「マスターコース2018 i n 仙台」には、2017年度にまちづくり元気塾が支援した4団体はじめ計7団体18名と、まちづくりパートナー7名が集まりました。
前半は、各団体から、まちづくり元気塾が支援した「その後」について報告がありました。能代観光協会は、支援を契機として組織づくりを継続し、各方面と連携して「能代市観光まちづくり会社」の設立を目指していると報告。支援時に担当した菊池氏は、支援終了をスタートと位置付け、商工会議所等とネットワークを広げている点がすばらしいと高く評価しました。また、9 町が合併した登米市で活動を続ける、とよま絆の会からは、旧町がそれぞれで問題を解決する傾向にあり、地域間協力が足りないとの悩みが。これには志賀氏が「隣は仲間」という意識を育て、パートナーとして来訪者を「共有」するのが基本、と助言を行いました。この他、各団体からそれぞれの進捗状況に即した報告や相談も。パートナーは活発に情報提供や助言を行いました。
A「全員参加の元気塾会議」
まちづくりに共通する課題・悩みについて、パートナーを交えて意見交換。
●若者を地域に集めるには、ターゲットを意識した仕掛けが大切。
活動報告に続いて「全員参加の元気塾会議」を実施。第1のテーマとして、参加された各団体共通の悩みであり、全国のまちづくり活動において課題となっている「地域づくりの担い手となる後継者(若者)をどう集めるか」について意見交換を行いました。
まず「ターゲットをどう呼び込むか」が第1の論点に。
岡ア氏は、ターゲットである若者の呼び込みが大切な理由として、高齢化よりも生産年齢の減少がより大きく影響すると指摘。また、近年、都市部の若者が農山漁村に興味を持つ傾向が高まっていることに言及。そういった都会の変化を地方で敏感に察知し、呼び込みのチャンスに変えていく必要があると話しました。
参加者からは、それぞれの地域の中だけでは活動のパワーに限界があり、これからは「隣は仲間」という前提で地域間協力が欠かせないとの意見が出されました。柳井氏は、都会から人を呼び込むためには、地域に伝わる食や文化、作法や知恵などといった「SLOW」を磨く必要があるとコメント。加えて、地域に呼び込むターゲットとして、@地域の伝統や古い価値観に憧れを持つ人、A外の目で新しい価値観を発見できる人、B地域でも自分の職を持ち込んで生活できる人を挙げました。そして、これら3つのタイプの人たちが地域に入って活動を始めると、彼らに憧れて移住してくる人も出て、地域が盛り上がることから、そういったターゲットを意識した地域づくりを仕掛けていくことが大切と話しました。
役重氏は自らの経験談として、若者に対しては、「上から目線で見ないで、彼らの立場になって、どうすれば楽しいかということを一生懸命考えることが大切」とコメント。花巻市で美しい棚田を見ながらのんびり走ろうというイベントを企画した際に、実行委員の若者たちに気づかれないよう、地域の年長者がこっそりサポートしたというエピソードも紹介しました。
●地域の人を呼び込むために効果的な情報発信とは。
第2の論点として「地域の魅力をどう発信していくか」が挙げられました。
まず、橋立氏がマイナス面を発信するユニークな事例を紹介。地元ではマンパワーが足りず大きな課題となっていた竹やぶの整備を、マイナスからプラスに発想して「楽しめる有料体験イベント」として都市住民にPRしたところ大盛況に。いまや都市と農村の継続的な交流事業に発展したというものです。寺川氏は秋田県内の大学生グループと連携したところ、SNSやクチコミでの情報発信に大きな力を発揮した事例を紹介。若者には若者が得意な分野をまかせると、従来のしがらみを離れた展開がより期待できると話されました。
役重氏は、情報発信は地元の人が自ら語るのが最も効果的と述べつつ、地域の魅力を他人に伝えることは容易ではない、とも言及。観光客のリピーターを増やすためには、まずは毎年里帰りしてくる孫や親戚など身近な方に対して、自分の地域の新しい魅力を積み重ね伝え、リピーターにしてほしいとアドバイスしました。
●カッコいい大人がいれば若者たちが地域に集まる。
次に、第2のテーマ「後継者(若者)をどのように集め、地域に残ってもらうか」について意見交換を行いました。参加者から、若者が地域に残りたくなるような育て方が大切ではないかと提言されると、パートナーからもさまざまな意見が出されました。
菊池氏によると、遠野の中学1年生に地元のすばらしさを話しアンケートを取ったところ、ほとんどの生徒が「初めて聞いた」と回答。おそらく親も先生も伝えていないのだろうし、こういう子どもたちは地域に残らなくて当たり前、と憂慮するお話が。一方で、幼いころから郷土芸能(神楽)に参加していた子どもが、「地元に残って神楽を続けたい」と想いを語りだしたため、地域で就職のお手伝いをしたという好事例も。橋立氏からは、音響技術に秀でた「カッコいい大人」がいたためにその土地が輝いて見えてきて、若者たちが吸い寄せられ、やがて定住した事例が、それぞれ披露されました。
柳井氏は、若者であれ年長の移住者であれ、その人に「場」が与えられれば、自分でなんとかしようと努力する、というお話が。この時、若者と地域を熟知する人材の2者だけではなく、両者をつなぐ「インタープリター(翻訳者)」が不可欠と強調しました。これらの情報提供をきっかけに、参加者からの質問が相次ぎ、最後まで活発な議論が続けられました。
議論を終えた参加者からは、「いろいろ刺激を受けた。これから頑張っていきたい」「自分も『インタープリター』を目指したい」などの感想が出され、会議は盛大な拍手で終了しました。