第1回/話題提供とワークショップ
「夢、やってみたいこと、できること」
まず「地域の価値」を見つけるための「視点」を。
初日前半は、まちづくりパートナーらが温泉を活かした先進事例を紹介。初日後半と2日目のワークショップでは「地域価値の発見」をテーマに、クアオルト※、温泉旅館、農産物の3分野それぞれで、今後やってみたい事業のアイデア出しを行いました。
※クアオルト・・・ドイツ語で「健康保養地」の意味。山形県上山市は、自然環境や温泉、食などの恵まれた地域資源を活かし、市民の健康増進、交流人口の拡大による地域活性化を目的としたまちづくり(上山型温泉クアオルト事業)に取り組んでいます。
まちづくりパートナーからの話題提供
温泉と周辺の資源を活かした「上山型温泉クアオルト事業」誕生の経緯を披露し、一緒に取り組む佐々木慶氏(上山市市政戦略課クアオルト推進室室長)が現況を説明。周辺の里山や景観、積雪などを巧みに利用した取り組みが注目の的に。参加者から多くの質問が寄せられました。【富士 重人氏】
島谷氏からは、農業と観光を結びつけ、成功した取り組みが紹介されました。特に、女性の発想や活躍が地域の活性化につながった事例をピックアップ。女性の参加者と島谷氏が盛んに情報交換する場面も見られました。【島谷 留美子氏】
ワークショップ 「夢、やってみたいこと、できること」/柳井 雅也氏
参加者を5つのグループに編成。地元で「やってみたいこと」や「できること」を考え、模造紙にまとめました。2日目は、それらを吟味し「単体企画」「連携企画」「全体企画」に再整理。班ごとにべストと思われるものを選びだし、とりまとめました。
- 各班からのアイデア
- 発表内容から(抜粋)
- 単体企画
- @SS農業ツアー(「S=しいたけ」の収穫体験と「S=そば」を打つ体験がメイン)
- Aきのこ、山菜を中心とした農家レストランの運営
- 連携企画
- @温泉+クアオルト 「昭和の学校」と川遊びを組み合わせた、子ども向け温泉パックと林道ウォーキング(通年)
- A温泉+農産物 地元で採れた野菜やそばを温泉旅館で販売
- 全体企画
- 七色の湯と原木しいたけをめぐるクアオルトツアー(花巻南温泉郷にある7つの温泉のいずれかに宿泊、散策や季節の地場食品を楽しむ)
【POINT】まちづくりパートナーより
キーワードは「皆で一緒に元気になろう」/島谷 留美子氏
まちづくりは全員が主役です。住んでいる一人ひとりに出番や役割があると皆が元気になります。皆さんの元気な姿は、何よりの地域資源です。そこにどんな人がいるか伝えることで、地域の価値はもっともっと高まります。
第2回/話題提供とワークショップ
「商品育て、地域資源の結び方」
売れる商品は、皆の力を集めて作られます。
第2回は、はじめに関氏と島谷氏が土産品のヒット事例など各地の情報提供を。その後は前回検討した内容を踏まえ、2日間にわたり地域特有の商品や観光事業の開発についてワークショップを実施しました。
まちづくりパートナーからの話題提供
土産品などの開発に豊富な実績を持つ関氏は、地域特有の資源を活用し、ターゲットを女性に絞って成功した事例などを紹介。「売れる商品にするためには、地域の皆の力を集めて作りあげ、さらに作ったままにせず、魅力を伝え続ける努力が欠かせない」との指摘に、大きくうなずく参加者の姿も。【関 美織氏】
島谷氏は前回に続き「地域内で連携し、つながること」の重要性を示す好事例として、大分県竹田市や由布市の取り組みを紹介。「他の地域や分野で活性化に努力する人・資源・情報とつながり、お互いの取り組みを伸ばしていきましょう」とアドバイスしました。【島谷 留美子氏】
ワークショップ「商品育て、地域資源の結び方」/柳井 雅也氏
参加者は4班に分かれて作業することに。1、2班は「SST=しいたけ・そば・たまねぎ」を活用した商品を育てるためのアイデアを。3、4班は「食材・温泉・昭和の学校・屋号集落※」など地域資源を結びつけ、より魅力を高める事業やサービスについて検討しました。「湯の郷」の照井代表理事が「誰に向けて」の商品化なのか、「誰に来てもらうため」の事業なのかを考えようと呼びかけ、熱気あふれるワークショップとなりました。
※屋号集落・・・屋号とは同じ姓の多い地域などで、名字の代わりに用いる、その家の呼び名のこと。大沢地区の集落では屋号を看板にして、各家の前に設置している。
- 各班からのアイデア
- 発表内容から(抜粋)
- 【商品開発】
- 50〜70代の女性に向けて:SSTひっつみ/SSTパン/“温泉のもと”をイメージしたしいたけの袋だし
- 若い女性に向けて:「そばの実」が美容に良いことをPRする冊子を作成し「そばの実」とセットで販売
- 【地域資源を活かした事業・サービス】
- 若い世代に向けて:SST農業体験/地域資源を探るために大沢地区の子どもたちが探偵団を結成/地域内の施設を把握し楽しくめぐるためのクイズマップづくり
- 50代以上の熟年世代に向けて:「歩・食・浴」をテーマとした昭和ノスタルジックツアー
- 観光客と地域の人に向けて:憩いの場の創造(屋号集落でお茶っこ飲み など)
第3回/話題提供とワークショップ
「地域価値のつなげ方、スケジュール化」
このまちにどんな人がいて、どんな特長があるのか。
第3回は冒頭、岩手県八幡平市の安比高原の開発にも携わった若杉氏と島谷氏が話題を提供。若杉氏は全国の観光振興に関するエピソードを、島谷氏はまちづくりにおける人的資源の重要性について事例を紹介しました。その後は2日間にわたりワークショップを実施。第2回で検討した内容をベースに、3つのテーマを設定。これらを具体化・実行するための予算や販売目標などについて議論しました。
まちづくりパートナーからの話題提供
「地域価値の考え方、見つけ方、つなげ方」をテーマに、安比高原や秋田県横手市の秋田ふるさと村などのまちづくりを手掛けた、若杉氏の経歴に即して事例やエピソードを紹介。施設の料金設定やグッズの価格設定について、具体的な算定方法などを示しながら解説されました。【若杉 清一氏】
島谷氏は、外からの視点で見た花巻の良さや、今後のまちづくりのポイントについて指摘。「自分たちのまちにはどんな人がいて、どんな特長があるのか知る努力を続けましょう。知るほどに感動が生まれ、感動が活動を継続させる原動力となります」とエールを送りました。【島谷 留美子氏】
ワークショップ「地域価値のつなぎ方・スケジュール化」/柳井 雅也氏
ワークショップでは、前回までに検討した内容を「商品開発」「イベント企画」「伝統・文化」の3テーマに沿って「より具体化して実行する」ための検討を行いました。運営体制や雇用計画、予算や売り上げ目標からスケジュールまで、まちづくりパートナーを交えて詳細に議論し、取りまとめました。
- 各班から出された商品や事業のアイデア
- 発表内容から(抜粋)
- 【商品開発】
- 空き家を「大沢 昭和の食堂」として2018年開業。メニューはしいたけそば、しいたけ入り温泉まんじゅうなど。5年後の収益予測は年間688万円に。
- しいたけは2018年4月収穫、そばは2017年11月試食会、新メニュー「しいたけそば」を2018年4月から販売。
- 【イベント企画】
- 農業体験。2018年モニター体験、2019年4月本格スタート予定。
- ツアーを3コース設定。@ふるさと体験コースA健康づくりコースB支援観察コース
- 【伝統・文化】
- 屋号集落で「お茶っこ飲み」。漬物や旬の美味しいものを持ち寄り、地域住民と観光客が交流。集落全体に声がけをして「お茶っこ飲みサポーター」を募る。
Afterword
■まとめ/チーフパートナーからのメッセージ
1回目では夢を語り、2回目は商品づくりを学び、3回目は予算・実務をシビアに検討しました。まちづくりは「ほどほどに楽観」「ほどほどに悲観」「そして大胆に」がポイント。今後はじまる実践の場でも、ホップ・ステップ・ジャンプを期待します。(柳井 雅也氏)
■ひとこと/東北電力より
人と地域がつながり、観光資源に輝きが
3回にわたる取り組みの中で、参加された方々の熱気と相まって、すばらしいアイデアが生まれました。この地域の観光資源が皆さんを介して結びつき、いっそう輝いたのだと思います。
(花北営業所 現:岩手県南営業所 所長 阿部 公哉)
※本文中に記載の役職等は、当時のものです。
【気づき】参加者からひとこと
「何をやるべきか、はっきり見えました。」
●農事組合法人 湯の郷 照井 順一代表理事
回を進めるごとに、頭がすっきりして、次に何をやるべきか見えてきました。まだまだ課題もありますが、皆で考えたアイデアを具体化するため、さまざまなところで企画をアピールし、地域を一緒に盛りあげていきたいと思います。