実施内容
四季折々の魅力が溢れる福島県奥会津地方、三島町(平成19年度支援地域)、金山町(平成21年度支援地域)、只見町(平成26年度支援地域)を会場に開催したマスターコース2015。
1日目は、まちづくり元気塾で料理実習ワークショップを経験した三島町の女性活動グループ「三島ランチBOX」による昼食披露会を開催。参加者は、会津地鶏などの地元食材をふんだんに使った料理に舌鼓を打ちました。その後、地元資源や伝統工芸を体験するため、三島町の会津桐タンス工場と三島生活工芸館、金山町の大塩炭酸水の井戸などを視察しました。
2日目は、只見町において、お年寄りを対象にした買い物支援バスサービスや、廃校になった旧分校を改装した山村くらし宿泊体験施設「森の分校ふざわ」を視察。その後、まちづくりパートナーによる講義と各支援団体の活動報告を行うなど、実りの多い研修となりました。
講義より
「日本の最先端は小規模市町村」 岡ア 昌之氏
人口減少や地方消滅が話題となっていますが、一般的に人口1万人以下は小規模自治体とされています。ところが海外に目を向けると、フランスやスイスでは、市町村の平均的な人口は1,500人〜1,800人程度。1万人の人口はかなり大規模です。
日本でもまちづくりに成功しているのは1万人以下の自治体が多い。北海道下川町のバイオマスとか。ご当地・三島町の生活工芸も凄いですよ。日本のまちづくりの最先端は小さな市町村にこそあります。
地域の生活文化をきちんと評価し、後世に伝えていく方策をどう構築していくか。まちづくりというのは、本来そういうものではないかと思います。
「滞在型観光の可能性」 米田 誠司氏
観光の仕事を通して痛感するのは、観光というものの恐さ。観光は、まちをどんどん良い方に変えていく効果もあれば、反対にまちが荒れていくきっかけとなってしまう場合もあります。 滞在型観光の良さは、1泊2日という日程で非日常と出会うだけの慌ただしい観光とは違い、地域の人々の暮らしぶりにじっくり触れ合えることです。
「インバウンドは怖くない」 菊池 新一氏
東日本大震災を契機に、近年インバウンドが加速していますね。でも怖くありませんよ、慣れてしまうと。ボディランゲージで十分やれます。言葉が通じなくても大丈夫、と割り切ることも肝要です。
「中で回す〜コミュニティ ビジネスとは」 柳井 雅也氏
岩手県で地ビールを製造販売している会社の場合、利益の1/3は儲けで、1/3は販売してくれた業者の商品購入に充て、自社ビールを買ってくれた人の景品にしています。残り1/3は研究開発に携わる地元の大学へ。こういうサイクルがきちんと回っています。「入ってきたお金を地域の外に出さない」という『中で回す』好例です。
「共生と対流へ」 橋立 達夫氏
私が首都圏の整備計画に関わった当初、首都機能維持のために、周辺地域が癒す、災害救援する、避難所になるなど、すっかり東京中心で物事が考えられていました。「それぞれの地域がちゃんと生きる、その地域の生活が豊かになるようなことを考えなくてはいけない」 と私は主張して、『首都圏中心の選択と集中』を『首都圏と各地域の共生と対流』としてもらいました。
「新しいネットワークには女性を」 本田 節氏
会津で新しいネットワークが誕生したことは喜ばしいことです。連携していく上での一番の課題は女性です。女性の感性を活かしてもっと実践していけたら、老若男女のバランスを保ちながら、より良い循環ができると思います。
「様々な発想で資源を活用」 嵯峨 創平氏
地方には、古民家や耕作放棄地など未利用の資源が山ほどあります。これらをきちんと利用・整備する『技術』と、整備後に運営する『ノウハウ』をきちんと身に付けることができれば、様々な発想で資源を活用することができます。
活動報告より
三島町エコ・ミュージアム協議会「三島ランチBOX」 森田 喜美代氏
「5年目に感じる手応え」
地元産品を中心に、100人ほどの児童向け給食を調理して提供していますが、5年目を迎えて感じるのは、支援・協力者の増加です。地物の食材調達は難しいと心配していましたが、続けるうちに、「孫が世話になっているから」と提供してもらったり、気軽に「持っていっていいよ」と声を掛けられるなど、野菜に関しては困らなくなりました。
供給先で、野菜嫌いや偏食の子どもが、「お代わりまでするようになった」と聞くと嬉しくなります。そんな子どもたちの様子を見て、お母さんたちがどんどんやる気になるのも嬉しく思います。
こういった一連の流れを地域全体が見守ってくれています。これが徐々に人と年代を超えたつながりになり、伝統のようになってくれたらと願っています。
お馬出しプロジェクト 代表 宮越 紀祢子氏
「次の一手を模索中です」
私たちの活動は、10周年を迎えました。この10年間、『お馬出し』という地名を地元にも来訪者にも発信してきました。まちづくり元気塾に参加してからは方向性に広がりが出てきました。総勢50人で手づくりのお芝居を公演したり、郷土のお姫さまゆかりの『イロハモミジ』を植樹したり。商店街の景観整備にも乗り出したのですが、残念ながら閉店が相次いでいます。表通りは華やかでも、中心街の住民は高齢化が進み、後継者不足は変わりません。
現在は気持ちを新たに、もうひとつの高田の宝物である、『雁木』のある町屋を活かしたシェアハウスを展開するなど、回遊性のあるまちづくりを目指して次の一手を模索しています。
明和自治振興会 角田 行雄氏
「体験から体感へのシフト」
7年前から只見町全体で、交流人口の増加を目指して農業宿泊体験に取り組んでいます。震災による影響で入り込みがゼロ同然になったりもしましたが、高校生や中学生、外国の方も引っ張って来ています。一方で、地元の受け入れ農家が減少傾向に。高齢化が進む中、「5年もやったからもういいでしょう」という声まで出ています。
『体験』というと、受け入れ側にとっては少し重いのかもしれません。そこで、まちづくり元気塾での経験や知識を活かし、今後は農村や農家を『体感』する交流へのシフトを考えています。