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岩手県釜石市

甲子柿を守る会

テーマ/地場特産品「甲子柿」を活用した地域おこし

地域の特産品である甲子柿は、生産・消費量ともに年々減少していました。「甲子柿を守る会」は、甲子柿の生産と消費拡大や知名度向上を目指し活動。まちづくりパートナーは、果樹オーナー制度のノウハウや新しい冷凍技術などの情報を提供し、各方面との連携づくりをサポートしました。現在、甲子柿のブランド化に向け着々と動きだしています。

※甲子柿(かっしがき)とは
釜石市甲子地方で収穫される渋柿を「柿むろ」と呼ばれる密閉された室屋で燻煙する、独特の渋抜き方法で作られる特産品です。

支援団体
甲子柿を守る会(会長 藤井 サヱ子氏)の皆さん
まちづくりパートナー
橋立 達夫氏(作新学院大学経営学部特任教授、チーフパートナー)
田村 幸夫氏(JAはが野理事)
菊池 新一氏(認定NPO法人遠野山・里・暮らしネットワーク会長)
東北電力株式会社
釜石営業所長 有川 増博 他
開催場所
釜石市甲子町「創作農家レストランこすもす」 ※第3回は陸中海岸グランドホテルで開催
方向性の模索チーフパートナーから/橋立達夫氏

共感から協働へ、感動がつなぐ

地域の方々が「共感を得られる」計画、地域の方々が「自分たちの言葉でつくった」計画こそが最高の計画です。自分たちの計画だから実現のために協働が生まれ、成功体験に出会うとその感動が次につながる。そのためのお手伝いをしたいと思います。

橋立達夫氏
まちづくりの現場に詳しい橋立氏によるアドバイス
まちづくりはストーリーが大事

第1回/経過の共有と話題の提供

【平成26年1月14日】

甲子ならではのストーリーを育てよう。

第1回は、「甲子柿を守る会」の現状や課題をまちづくりパートナーと参加者で共有するため、これまでの活動経過を報告。また今後の方向性を探るため、まちづくりパートナーからの話題提供、参加者同士での意見交換を行いました。

地場産品の「甲子柿」を見直そう

まちづくりパートナーからの話題提供

まちづくりと商品の魅力づくりの接点を考えると、ストーリーが大事。甲子地区を舞台にした苦労話や夢、ユーモアを交えて語る『甲子柿物語』に載せて柿を売るというイメージで展開するのも効果的です。(橋立 達夫氏)

第2回/事例の紹介〜「やだねん」のDVDを視聴

【平成26年3月14日】

やりがいから生きがい、暮らしがいへ。

第2回は、今後の参考事例として、DVD「やねだん※〜人口300人ボーナスが出る集落」を視聴。まちづくりパートナーによる解説や、意見交換が活発に行われました。

※『やねだん』とは
鹿児島県鹿屋市柳谷集落のことで、120世帯およそ300人が共存する、高齢化が進む中山間地域の集落。この集落は子どもたちから高齢者まで強い絆で結ばれ、集団営農から六次産業化を推進することで独自財源を築き、高齢者には1万円のボーナスが支給され、地方創生の”good practice”として全国的に注目されています。(出典:やねだんオフィシャルwebサイト)

『やねだん』に学ぼう

『やねだん』の魅力は第一にユニークさです。例えば、空き家をきれいにして移住者を招く。移住者は芸術家に制限する。これは、地域発展で大切なのは文化であり、文化が閉塞して地域が滅びることがないように、他の文化と融合させようという戦略の現れです。
二番目は優しさ。地元のリーダーである豊重先生は、スポーツでも学業でも、いつも誰が一番困っているかを考え、そこから発想します。困っている人を助けるために事業を考えています。 これらの発想や心遣いに、大いに学びたいと思います。(橋立 達夫氏)

第3回/先進事例を学ぶ講演会

【平成26年5月28日】

地域活動に補欠はいない。

第3回は、釜石市の甲子地区や鵜住居地区などの視察と、『やねだん』の豊重哲郎氏を招いての講演会を実施しました。視察では、まちづくりパートナーが地区の全体像や特徴を把握し、講演会では、豊重哲郎氏の熱のこもった講演をメインに、まちづくりパートナーからのアドバイスや意見交換も行われました。

豊重哲郎氏講演内容から

地域づくりには必要な三本柱があります。(1)行政に頼らず自ら率先して行う『住民自治』、(2)企業経営の感覚で自主財源を確保する『財務管理』、(3)人が集まるのが大前提である以上『地域づくりは 総力戦』です。
まちづくりのために人を集める時は、自分自身の言葉で語り掛け、明確な数字を示さなければなりません。 地域住民の総参加は、感動と感謝の気持ちがあってはじめて実現します。
人は心で揺さぶりあっている存在です。
 「地域活動に補欠はいない」。たとえ新しい方針に対して現れる反対派に対しても、参加してもらえるよう粘り強く努力する必要があります。地域づくりはひとりひとりがレギュラーです。
地域づくりは「三歩進んで二歩下がる」、「急ぐな、慌てるな」、そして、勉強してよそからいただいた知識=『もらい言葉』は、必ず、「自分の言葉につくり直す」ことが重要です。そうでないと自分のものにならず、使えなくて無駄になり、後継者にも伝わりません。

真剣な表情で耳を傾ける参加者たち
会場には行政関係者や若い世代の姿も
豊富な経験を踏まえて語る 「やねだん」の豊重氏
【POINT】まちづくりパートナーより

「任せておけばなんとかなる?」/菊池 新一氏
かつての日本では、地域づくりは行政などに任せておけば何とかなった。でも、今は自分たちで何とかしなくちゃならない時代です。そうかと言って、誰かのどこかの取り組みのコピーそのままじゃなんともなりません。自分たちの思いと苦労で手づくりしないと。大切なのは、なにより自分のこととして思い立つことです。「巻き込む人」がいてはじめて、「巻き込まれる仲間」ができます。

被災地を視察するまちづくりパートナーたち

第4回/情報の共有ワークショップ@

【平成26年11月3日〜4日】

伝統的な産品に、最新の技術と制度を。

第4回の初日は、甲子地区の柿畑や「燻蒸室」を視察し、甲子柿生産の過程についてヒアリングを実施しました。
2日目は、甲子柿の生産や販売を拡大するための具体的な方策として、まちづくりパートナーより、CAS(キャス)冷凍技術と果樹のオーナー制度について話題提供があり、実現に向けて意見交換を行いました。

オーナー制度の詳細や事例を紹介する田村氏

CAS(キャス)冷凍技術について

●菊池 新一氏より
柔らかい食材に向いた最新の冷凍技術。特定の磁場環境で瞬間的に冷凍するため、食材の細胞が破壊されません。解凍しても鮮度が保たれ、口あたりを損なわず、生き生きとした食味が保てます。 CAS冷凍をうまく活かせば、甲子柿の風味を守りながら、いつでも出荷できるようになります。世界で初めての「1年中楽しめる熟柿」誕生も可能で、料理やスイーツにも幅広く展開できそうです。

果樹オーナー制度について

●田村 幸夫氏より
オーナー制度は、果樹などのオーナーを有料で募集し、収穫した果実や加工品を提供します。成功させるポイントとしては(1)継続的なイベントや交流の提供、(2)環境学習への協力、(3)加工品の開発と販路確保が挙げられます。
まちづくりにオーナー制度が役立つというのは、事業規模の拡大だけではありません。人と人との関係が密になり、地域の見直しにつながります。関わる人自身に好ましい変化が生まれますよ。

第5回/イメージを具体化〜ワークショップA

【平成27年3月24日〜25日】

3つのテーマごとにキーワードを抽出。

第5回の初日は、経過報告を行い、これらについて意見交換会を実施しました。
2日目は、ワークショップを実施し、(1)生産者・消費者・一般・行政への要望出し、(2)今後の「甲子柿を守る会」の活動をどうするか、(3)ブランド柿のネーミングを考えよう、という3つのテーマごとに討議し、今後の方向性に活かすためのキーワードを抽出しました。

甲子柿の美しさを活かす方向性を模索しよう

ワークショップで抽出した今後に活かしたいキーワード

●ルビーのような輝きは驚き!生クリームをのせたい。
● 夏にジェラート化すれば高く売れる。
●ネーミング、パッケージが重要。
●オーナー制度はモノのやり取りだけでなく、生産現場への関与が重要。
●販路は、遠方よりも近隣で広げよう。
●商品は、家庭用も業務用も考えよう。
(以上まちづくりパートナーより)

●釜石に道の駅ができたら販売したい。
●魚のように冷蔵が当たり前の果物があることをイメージさせたい。
●高校生など若い人の意見も聞きたい。
●使わない畑や木の買い取りなど、生産者の話し合いも必要。
(以上参加者より)

キーワードへの総評

●守る会の取り組みが釜石市全体へ波及して、釜石市が元気になるような広がりを。
●ジェラート展開は経費のあてがつき次第、進めてみると良い。
●オーナー制度は柿の生産者とも連携し、ぜひ甲子地区に合った方法を検討してもらいたい。
(橋立 達夫氏)

古くて古いもの、新しくて新しいものは廃れる。「古くて新しいもの」が残る。

フォローアップ/成果の検証と今後に向けて

【平成27年11月6日〜7日】

地域に開かれた体制づくりを。

フォローアップでは、2日間にわたって意見交換会を行いました。
初日は、第5回以降の活動展開について報告と検証を実施。
2日目は、ブランド化の手法や生産組合等の運営体制の転換について、ディスカッションを行いました。

今後への確かな手応えが感じられた

第5回以降の活動展開について

CAS冷凍技術を活用した甲子柿に「ルビーのめざめ」というブランド名の素案が生まれました。また、CAS冷凍技術などが地元で話題になったおかげで、地域の内外で甲子柿に興味を持つ人も増えました。オーナー制度については体制整備を加速しながら、全国に発信していきたいと考えています。(藤井 了氏)

まちづくりパートナーの今後へのアドバイスより

オーナー制度ではどこに主眼を置くのかが重要です。『余っている柿の木の活用』なのか、『人に来てもらうこと』なのか。ブランド商品化した時の「買い手視点」の取り入れ方にも留意してほしいです。『古くて古いもの』や『新しくて新しいもの』は廃れ、『古くて新しいもの』が残ります。(菊池 新一氏)

参加者コメント

独立独歩の気風がある地区ですが、せっかくの地域プロジェクトなので、多くの方に関わっていただきたいと感じています。生産者だけでなく、一般の方々にも開かれた体制だと良いですね。

【気づき】参加者からひとこと

「もっと早く出会いたかった」

●甲子の里柿生産組合 組合長 藤井 修一氏
『守る会』との連携から、生産組合の体制を整えていこうと考えるようになりました。この地区の気風は保守的で連携が得意ではありませんが、発想を転換し視点を変え、新しい展開をしていきたいと思います。CAS冷凍やオーナー制度など、もっと早く出会いたかったですね。

甲子の里柿生産組合 組合長 藤井 修一氏

Afterword

■まとめ/チーフパートナーからのメッセージ

ビジネスだけで終わらないはず。
会の活動が盛んになって、人が集まり、販売拠点もできました。追い風を感じられてうれしいです。単にビジネスで終わらず、交流事業へと展開してほしいですね。オーナー制度でも、たとえ収量が確保できなくとも納得してもらえる関係づくりが不可欠。そのために受け入れ態勢の工夫やレベルアップを、自分たちで続けていかなくてはなりません。(橋立 達夫氏)

■ひとこと/東北電力より

まちづくり元気塾を重ねるごとに、地域の皆さんの活動が活発化していきました。まちづくり元気塾の経験と話し合いから生まれた新たなアイディアがつながって、甲子柿を中心としたまちづくりがさらに盛り上がることを願っております。(釜石営業所長 有川 増博)

※本文中に記載の役職等は、当時のものです。