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新潟県上越市

お馬出し(おんまだし)プロジェクト

チーフパートナー/志賀 秀一氏/(株)東北地域環境研究室 代表

お馬出しプロジェクトの課題

上越市高田は、徳川家康の六男、松平忠輝の居城であった高田城、寺町、雁木通りをはじめ城下町風情を今に伝えています。かつては観光客が多く、商店街も賑わっていましたが、近年は訪れる人が減少しています。「お馬出しプロジェクト」は、平成17年9月の発足以来定期的にイベントを催すなど、地域の活性化に取り組んできました。活動の輪は徐々に広がりを見せていますが、さらに地域全体への浸透を図っていくためには、これからが正念場です。平成26年には高田城開府400年。そして、北陸新幹線の金沢開業が控えています。これらを見据えながら、地域の方々と元気なまちづくりを進めていきたいと思います。

志賀 秀一氏

第1回派遣

【平成22年7月4日(日)〜7月5日(月)】

概要

はじめに高校卒業まで高田に住んでおられた(財)日本交通公社 研究調査部長 梅川智也氏から「観光まちづくり」について、数々の観光データや実際に成功したまちづくりの例を挙げながら、そのポイントについてのお話しがありました。続いて、ゲストでお招きした、国土交通省の神田昌幸氏から「景観から見たまちづくり」をテーマに各地域で行われている景観保存を例に、いかに景観を整えていくことが大切かについてお話しがありました。

【インタビュー】まちづくりパートナー /梅川 智也氏

●(財)日本交通公社 研究調査部長
私の父は、昔、東北電力に勤めており、父の転勤に伴って小学校から高校まで高田に住んでおりました。そんなご縁もあり、今回は少しでもお役に立てればと思い、パートナーを承りました。私は30年来、観光地の活性化などに関わってきたことから、今回も「観光」という観点からお話をさせて頂きました。現在の観光というものは、これまでとは大きく様相を変えています。従来の観光といえば、旅館や土産物屋、旅行会社が連携してつくるものという考えが主流でしたが、現在では「まちづくり」というものと密接に関係してきています。地域住民が一丸となり、一緒に観光(見所、商品、味など)について考えていく。そうした人の交流により町は元気になり、さらに人の流入が増えることで一層交流は盛んになります。まちづくりを考える上では、どんな声が集まっているのか、どんな進捗にあるのかなど、情報共有が大切です。誰もが身近に考え、参加できるような仕組みが必要だと思います。

まちづくりパートナー /梅川 智也氏

【インタビュー】まちづくりパートナー /神田 昌幸氏

●国土交通省 都市・地域整備局 まちづくり推進課 都市総合事業推進室長
高田は非常に歴史のある町です。高田城のみならず「雁木」という資産では、日本一有名でもある。しかし、これは一般論ですが、歴史のある町ほど、他地域の人を受け入れない傾向を持っています。私は、まちづくりには“土の人”と“風の人”が必要だと思っています。土の人とは、まさにその土地に住む人、そして風の人は、縁があってその町と関わる人です。風の人は、普段地域の人々が気づかない土地の良さを教えてくれますし、新鮮な情報や新しい知恵を授けてくれます。また人と人をつなぐ役割もしますし、さらには資本(お金)も投下してくれる。まちづくりは、風の人の声に耳を傾けることがとても重要です。実は、私は公務員になりたての頃、2年間新潟県庁に出向していました。その後深く関わることになる「景観行政」は、私にとってはまさにこの頃の経験が端緒になったのですが、当時なかでもこの高田に一番力を入れていたのを憶えています。今回は、そんな強いご縁も感じています。

国土交通省 都市・地域整備局 まちづくり推進課 都市総合事業推進室長/神田 昌幸氏

【インタビュー】お馬出しプロジェクト 代表 /宮越 紀弥子氏

お馬出しプロジェクトは、主に、商店街の回遊性を高めようと、アート遊市など、イベントを中心に行ってきました。こうして交流が深まるなか、もっと地元のことを知ろう、と「お馬出し塾」を3ヶ月に1回のペースで開催してきました。主に地元の歴史を中心に毎回専門家の方を招いて講演をして頂いたのですが、私たちも知らないような、貴重で面白い話がたくさん出てきて、高田をもっと城下町らしい歴史を感じられる町にしたい、という気運が高まってきました。お馬出しプロジェクトも、イベントだけでなく、何か形に残るものを企画したいと思っていたので、今回「まちづくり元気塾」の支援地域に指定して頂いたのは、またとないチャンスだと思っています。講演や、その後の意見交換会では「全員参加のまちづくり」が大切なのだと、改めて感じました。まちづくりに無関心な者をつくらない。そのためには情報共有が重要で、お馬出しプロジェクトでは、瓦版をつくって配布することを考えています。

お馬出しプロジェクト 代表/宮越 紀弥子氏

第2回派遣

【平成22年9月12日(日)〜9月13日(月)】

概要

前回課題として再認識された「全員参加のまちづくり」をより具体的に推進するために、吉川由美氏によるコミュニケーション促進を図るワークショップが開催されました。自己紹介から始まり、町の「いいところ」「悪いところ」「3年後のビジョン」の抽出、相互理解を促すインタビュー遊びなどが行われました。吉川氏からは「建前コミュニケーションを排すること」「どんな人生経験を経てきた人が町にいるのかを知ること」など、課題解決に向けた意見が随所で出され、参加者間で共有されました。

【インタビュー】まちづくりパートナー /吉川 由美氏

●(有)ダハ プランニングワーク 代表取締役
普段の社会生活のなかでは、あまり本音でのコミュニケーションは行われないもの。ことに「まちづくり」というビジネスベースの話となると、その傾向は強まります。しかし、本当に大切なのは「いいことも悪いことも語り尽くして、現状がどうあるのかを、みんなが情報として共有する」ことです。また、人材を生かすには、いま「どんな人生のドラマを経験してきた人が地域にいるのか」を知ることが重要。まちづくりには、これらを"見える化"する仕組みが必要なのです。そうした目的で今回のワークショップを行いましたが、お馬出しプロジェクトのみなさんは「かなりビジョンの共有が進んでいるな」と感じました。特に男性・女性間で考え方に差異がないところがいい。しかし、例えば雁木の整備など「お金がかかる」との理由で足踏みしている部分もあるようです。まちづくりは、お金をかけなくてもできます。その鍵は、柔軟な発想と行動力です。老若男女の意見・知恵をうまく吸い上げ、お馬出しプロジェクトならではの企画を練ってみてください。

まちづくりパートナー/吉川 由美氏

【インタビュー】東北電力(株) 上越営業所長 /山中 貞一氏

上越市は、海・山・平野に恵まれた、自然が豊かで変化に富んだ地形を有しています。そのなかで高田は直江津と並び、市街化の進んだ地域です。この2都市は距離的にごく近いにも関わらず、高田は平野部、直江津は海岸部にあることから、地域的に独自の特色を持っています。港町直江津とはまた違い、江戸期の面影を残す高田の町並みは「歴史」を感じさせます。また、直江津もさることながら高田地区の方々も、街に対する愛情・愛着が非常に深く、そのため活性化に対する考え、そして行動もとても真摯であると感じています。お馬出しプロジェクトも、普段から活発にイベントなどを行っており、私も日頃から応援していました。今回のワークショップでは「体を動かせて面白かった」「あまり面識のない人とコミュニケーションが取れて楽しかった」などの声を多く聞きました。楽しみながら、まちづくりについて考えるお手伝いができたことを、私たちも嬉しく思っています。

まちづくりパートナー /山中 貞一氏

第3回派遣

【平成22年12月4日(土)〜12月5日(日)】

概要

第2回派遣では、お馬出し通りの人々のコミュニケーションを醸成するワークショップを開催。第3回派遣では、これをさらに一歩進めるため、通りに軒を連ねる各店舗に、商売のこだわりや専門知識、苦労話などを聞いて回る『へぇへぇウォーキングツアー』が、吉川由美氏引率のもと行われました。各店主の方々からはさまざまな話が披露され、参加者からは「近所で商売していたのにまったく知らなかった!」という声も。ツアー後は、同じく吉川氏から、合成写真などを使った景観づくりの提案が。雰囲気の変わった通りの様子を見て、参加者間で具体的なイメージが共有されました。

【インタビュー】お馬出しプロジェクト 代表 /宮越 紀弥子氏

『お馬出し通りへぇへぇウォーキングツアー』は、本当にびっくりすることや、感心すること、感動することの連続でしたね。『原田漢方療院』さんでは、中国の古い時代の観音様を見せていただきましたし、『肉の鳥久商店』さんのおばあちゃん(店主さん)のたくさんの苦労話も初めて耳にすることばかりで、人生の深みや数奇さに胸を打たれました。他にも『菓子処もちや』さんや青果店『山田屋』さん、『大島豆腐店』さんなど、それぞれ商売に関するこだわり、うんちくを語っていただき、大変参考になりました。みなさんとても表情がイキイキしていて、まるで晴れのステージにでも上がったよう。本当に仕事に「誇り」を持っているんだな、ということがわかる、またとない機会となりました。3回の元気塾を通して、かなりまちづくりの像が見えてきました。より強まった人々の結束を大事にしながら、具体的な方策を立て本格的にまちづくりを進めていきたいと思います。

お馬出しプロジェクト 代表 /宮越 紀弥子氏

【インタビュー】総合衣料品店 あど 店主 /平賀 縫子氏

今回は、一軒一軒のお店を回れて、いろんな話が聞けて本当に楽しかった!お馬出し通りは、それほど広いエリアではないのに「ここにこんなお店があったんだ、知らなかった!」と、いろいろな発見がありました。それに、それぞれのお店が「こだわり」を持って商売をしていらっしゃる。『焼き鳥酒房しらかば』さんは、ビックリするくらい「塩」の種類にこだわっていて、いろんなうんちくが聞けて面白かったですね。いままで行ったことがなかったので「私のお店のみんなも連れていかなきゃ」と思いました。こうした楽しい体験、また街の活性化へ向けていろいろなアクションが起こせたのも、和菓子と和雑貨の店『大杉屋』の宮越さんが頑張ってくれたからだと思います。また、チーフパートナーの志賀先生、各回のパートナーの先生方、そして東北電力のみなさんが力強く引っ張ってくれたからです。これをきっかけに、お馬出し通りをどんどん元気にしていきたいと思います。

総合衣料品店 あど 店主 /平賀 縫子氏
チーフパートナー/志賀 秀一氏/(株)東北地域環境研究室 代表

3回の派遣を終えて

「お馬出しプロジェクト」は、イベントの企画や、まちの歴史勉強会の開催など、日頃から活発に活動していました。そんななか、通りをもっと城下町らしい景観にし、商店街を活性化させたいとの意見が浮上。こうしたビジョンを支援する形で元気塾がスタートしました。しかし、実際に赴いて感じたのは、店舗によって、まちづくりに対する温度差があるということ。商店街というのは、お客様のニーズは何かを徹底的に話し合い、品揃えやサービスのあり方、商品開発などを考えていくものです。そこで今回は普段の交流を越え、さらに踏み込んだコミュニケーションを行うための「土台づくり」をサポートさせていただきました。このような課題を抱える地域は多く、平成20年に支援した南魚沼市の「牧之通り組合」もそうでした。しかし、牧之通り組合は元気塾のサポートにより連帯を深め、いまではさまざまな企画の立案・実施に大忙しの状況が続いています。お馬出しプロジェクトでは、牧之通りの視察を行い「非常に刺激を受けた」という話を聞いています。こうした地域の元気が他地域の元気につながる「元気の化学反応」が起こればいいと考えています。お馬出し通りの景観に関しても、最終日に提案した「雁木に格子を取り付ける」などのアイデアが好評のようで、これらが実現すれば、お馬出し通りは高田の街のなかでも、ひと際インパクトのある通りになると思っています。今後のみなさんのご活躍を期待しています。

志賀 秀一氏

お馬だしプロジェクト パートナー紹介

チーフパートナー

志賀 秀一氏 (株)東北地域環境研究室 代表

北海道出身。中央大学経済学部卒業後、北海道東北開発公庫(現・日本政策投資銀行)入庫。平成13年2月から、(株)東北地域環境研究室代表。まちづくり元気塾:宮城県大崎市(平成18年)、岩手県岩泉町(平成19年)、新潟県南魚沼市(平成20年度)、山形県南陽市(平成21年度)を担当。

志賀 秀一氏

まちづくりパートナー

梅川 智也氏 (財)日本交通公社 研究調査部長

新潟県出身。筑波大学社会工学類都市・地域計画専攻卒業後、(財)日本交通公社(調査部 観光計画室 研究員)入社。平成17年6月より現職。観光リゾートを主体とする都市・地域振興計画の策定、プロデュースに多数従事。

梅川 智也氏

まちづくりパートナー

吉川 由美氏 (有)ダハ プランニングワーク 代表取締役

各地でコンサート、演劇などのプロデュース、脚本、演出などを手がける。仙台市を中心にコミュニティアート活動を展開。平成16年から仙台市の倉庫を会場に開催される『はっぴい・はっぱ・プロジェクト』をプロデュース。まちづくり元気塾:新潟県南魚沼市(平成20年度)、山形県南陽市(平成21年度)、秋田県仙北市(平成21年度)を担当。

吉川 由美氏

お馬出しプロジェクトのアドバイザー紹介

神田 昌幸氏 国土交通省 都市・地域整備局 まちづくり推進課 都市総合事業推進室長

京都大学大学院工学研究科土木工学修了後、建設省(現・国土交通省)に入省。東北地方整備局酒田工事事務所長、都市・地域整備局都市計画課企画専門官、倉敷市助役などを経て、平成22年より現職。景観法の制定、まちづくり交付金事業等に数多く関わる。

神田 昌幸氏

「お馬出し(おんまだし)プロジェクト」とは

「馬出(うまだし)」とは、城の入口や城門を守るために設ける空間をいう。高田城址から南へ1kmばかりの地点は「お馬出し通り」と呼ばれ、これを市民による賑わいのあるものにしようということで、平成17年同プロジェクトは発足した。「春・秋のアート遊市」「七夕縁日」「お馬出し塾」を活動の主軸にしており、これに加え、現在では高田城開府400年に向けて、記念事業を構想中。

※本文中に記載の役職等は、当時のものです。