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岩手県二戸市

岩誦坊クラブ

チーフパートナー/柳井 雅也氏/東北学院大学 教養学部 教授

岩誦坊クラブの課題

約30年前から地元の山・稲庭岳を中心とした地域づくりを行っている「岩誦坊クラブ」ですが、活動が農閑期に限られるということから、イベントが企画の中心でした。また、助成金を得ての事業も実施してきましたが、継続性、発展性という点では課題となっていました。地域内の温泉施設「天台の湯」や産直施設「キッチンガーデン」等、他施設との連携も取れておらず、大変もったいないと感じました。活動が単発的になりがちなのは、最終ゴールが定まっていないからだと思います。たとえば、地域のファンを増やし、定住人口を増やすのもひとつの形。自分たちは何をやりたいのか。ゴールから逆算すると、今何をすべきか、地域づくりの"芯"が見えてきます。

柳井 雅也氏

第1回派遣

【平成22年6月24日(木)〜6月25日(金)】

概要

活動の方向性のヒントをもらい、メンバー間で認識を共有することを目的としたレクチャーとワークショップを実施。会や活動の知名度を上げる方法や継続的に運営するための活動資金づくりについてなど、先進地域である高知県 四万十ドラマ代表取締役 畦地履正氏のレクチャーを受けた後、濱博一氏による地域資源を見直すワークショップが行われました。

【インタビュー】まちづくりパートナー /畦地 履正氏

●(株)四万十ドラマ 代表取締役
「観光」とは、その土地の"光"を観に行くことです。その光は大小さまざまですが、稲庭岳が位置する浄法寺地区には多くの"大きな光"があると感じました。ただ、それを活かすのはあくまでも地元の行動力次第。今回感じたのは、活動の具体的な「出口」=「ビジョン」を見つけていないということでした。「四万十ドラマ」の場合は、"四万十川流域に暮らす人が幸せになる仕組みづくり"をするという明確なビジョンがあります。そのために「四万十川に負担をかけないものづくり」をコンセプトに、お茶や栗を柱とした産業育成や、新聞バッグなどの商品開発等、環境循環ビジネスを進めてきました。地域づくりには「人」「考え方」「モチベーション」「方向性」そして何より「ビジョン」が必要です。さらに次代を担う後継者を育成することも重要な課題になります。岩誦坊クラブにしかできない、オンリーワンのものを発掘されることを期待しています。

まちづくりパートナー /土田 豊氏

【インタビュー】岩誦坊クラブ 会長 /田口 俊夫氏

稲庭岳はなだらかで登りやすく、岩手山や八甲田連峰が一望できる景勝地です。しかし「秋田県ですか?うどんの…」と言われてしまうほど、知名度が低い。通年でお客様を呼ぶにはどうしたらいいか、その第一歩として、濱先生のワークショップで改めて地元の「宝」を見直したのは、クラブ会員にとって励みになりました。私たちが当たり前だと思っている自然の恵みが、都会の人には癒しになるんですね。また、人材も十分に掘り起こす必要があると感じました。特に女性をどう活動に巻き込むかを指摘していただき、勉強になりました。「天台の湯」の活性化も含め、活動資金づくりのため、蕎麦店等の運営を考えていましたが、初期投資や運営費がかかる。であれば、まずは体験プログラムの開発を、という意見もまた、参考になりました。畦地先生からは岩誦坊の水を飲んでもらう体験だけでも十分にコミュニティビジネスになるとうかがい、そうした発想に刺激を受けました。

岩誦坊クラブ 会長/田口 俊夫氏

第2回派遣

【平成22年10月4日(月)〜10月5日(火)】

概要

第1回のワークショップで掘り起こされたお宝(地域の資源)を、どうまちづくりにつなげていくか。その具体策を検討するため、東北観光推進機構 阿部昌孝氏より、まず福島県喜多方市の住民が一体となり企画した観光博「きたかた喜楽里博」の実践例が紹介されました。「地域の小さな資源でも、プランニング次第でこんなに魅力的になるんだ!」。そうしたヒントを得た後、阿部氏の進行により、お宝を活用したツアー企画を、グループ単位で企画・立案。タバコの嫌煙ムードを逆手に取った「タバコ吸い放題」など、葉タバコ生産地らしいユニークなアイデアが数々出されました。

【インタビュー】まちづくりパートナー 阿部 昌孝氏

●東北観光推進機構 推進本部副本部長 兼 海外事業部長
現代の観光ニーズは、単なる物見遊山だけでなく、地域のライフスタイルをそのまま体験したい、というものにまで裾野を広げてきています。広い日本の各地域、例えば九州、四国、東北などではそれぞれ生活の様式に大きく差があるわけですね。観光客は、そういったものに憧れを感じて訪れるのですから、保有する資源に誇りを持ち、地域の「アイデンティティ」として確立しておくことが大事。そういう意味で、今回のワークショップのなかで資源を観光ツアーとして「つなぎあわせる」試みをし、形が見えてきたことは、大きな成果があったと思います。最初、躊躇していた面々も「ノリ」始めると、アイデアがどんどん出て来て、盛り上がっていく様子を見ているのが楽しかったです。今後は、諸々の場面で活動を牽引し、また継続していく「人づくり」をしていくことが重要ですね。成果を期待しています、頑張ってください!

まちづくりパートナー /阿部 昌孝氏

【インタビュー】岩誦坊クラブ メンバー /田中 千歳氏

私は以前から、市街にある児童館などで、子どもに対するボランティア活動として「本の読み聞かせ」や「郷土カルタの読み手」などを務めてきました。そうした関係から、丸山保育所長を務めていた三上さんとも、古くから昵懇でした。しかし今回、保育所廃止後の「あそびの学校」が、利用者の減少やスタッフ不足から、窮地にあることを知り、この元気塾の意見交換会に馳せ参じました! やはり、地域に根ざしたサービスを提供する場合、広くその活動を知ってもらうことが必要だと思います。あそびの学校は、市街地から離れていますが、いまはクルマの運転ができるお爺ちゃん、お婆ちゃんもたくさんいます。そうした人々にサポートしてもらえば、市街の子どもを受け入れることもできます。市議という立場からは、今後はより広くあそびの学校をPRし、支援できればと思っています。また私人としては、お菓子づくりが得意なので、お菓子づくり体験などで、子どもたちと「あそびたい」と思います。

岩誦坊クラブ メンバー /田中 千歳氏

【インタビュー】二戸市長 /小保内 敏幸氏

岩誦坊クラブとは、これまでにも市とビジョンを共にし、さまざまなまちづくり活動を行ってきました。二戸市には、こうした活性化を目的とした団体がいくつかありますが、岩誦坊クラブは団結力、企画の質の高さなどで、まさにトップクラスにある団体だと評価しています。現状、当地域はツーリストを迎え入れる体制がまだまだ未整備にありますが、資源としては素晴らしいものがたくさんあります。今後はインタープリター(案内人)の育成や、観光コースの整備などを進めていく予定ですが、岩誦坊クラブにも多いに力になってもらいたいと思っています。二戸は中山間地域で、昔から雑穀を多く生産しています。雑穀は胃がんの抑制に効果があり、WHOの調査・研究でも、二戸は胃がんの少ない非常に特徴的な地域であることが分かりました。こうした側面もアピールしていきたいと思います。

二戸市長 /小保内 敏幸氏

第3回派遣

【平成23年1月19日(水)〜1月20日(木)】

概要

第2回派遣の際に数多く出されたツアー企画を生かして、通年で観光客の受入ができるよう、実施可能な時期毎に整理する「イベント・カレンダー」制作を、参加者全員で行いました。濱博一氏の進行のもと、岩誦坊クラブのメンバーの様々なアイデアが引き出され、見る見るうちにイベント・カレンダーができあがる様子に、会場からは感嘆の声が。それに続いて、稲庭岳のブランド化を図るため、冠となるフレーズの考案が行われました。「シマリスの里 岩手稲庭岳」や「いただき 岩手稲庭岳」など楽しいコピーが提案されました。

【インタビュー】まちづくりパートナー /濱 博一氏

●(株)アスリック 代表取締役
稲庭岳の周辺には、まだまだ掘り起こされていない「お宝」が数多く眠っていると思います。それは初めてこの地を訪れたときに「土」の豊かさ、質の良さを感じたからです。普通、自然や農作物などを地域のお宝と考えますが、実はその土台となっている「土」がよくなければ、多くの実りは生まれません。「土」こそが地域の底力なのです。どうか自信を持って、もう一度資源の再点検をしてみてください。今回は、考案されたイベントを実行可能なものへと仕上げる大詰めの段階であったため「思いっきりやらせてもらおう!」という気持ちで臨みました。特別細かい準備はせず「当意即妙」に重きを置きプランニングしていきました。この読みは功を奏し、イベント・カレンダーは見る間に完成。岩誦坊クラブはもともと勢いがあり、ビジョンを投げかければ、すぐさま意思決定し、行動に移せる団体であることを知っていたため、今回はこうしたスタイルを取りました。企画の質を向上させるモニタリングの提案もさせて頂きましたので、ぜひ形にして欲しいと思います。「あとはやるだけ、稲庭岳」です!

まちづくりパートナー /濱 博一氏

【インタビュー】二戸市役所 政策推進課 主査、岩誦坊クラブ メンバー /田山 裕之氏

岩誦坊クラブは、約30年という長きにわたって地域の活性化を目標に活動していますが、私が参加したのは10年ほど前になりますでしょうか。これまでは、とにかく「面白いと思うことをがむしゃらにやってきた」という感じですけれど、まちづくり元気塾では、もっと地域の宝に目を向け魅力をアップさせること、他地域からのお客様を迎え入れられるようプランを立てて確実に形にしていくことなど、多くの事が学べ、ステップアップが図れたと思います。今回イベント・カレンダーに組み込まれた企画で一番楽しみなのは「ジャッコ(イワナやヤマメ)釣り体験ツアー」ですね。最近、魚釣りは「危ないから子ども同士で行くな」などと言われています。でもこの体験ツアーには、地元のベテラン釣師がガイドでつくし、もともと浅い川なのでそれほど危険もありません。また、行政からは川べりを整備する計画が持ち上がっていますので、より多くの人に岩誦坊の清流や自然、生き物と触れ合ってもらえるようになると嬉しいですね。

二戸市役所 政策推進課 主査、岩誦坊クラブ メンバー /田山 裕之氏

【インタビュー】東北電力(株) 二戸営業所長 /高橋 義則氏

二戸市浄法寺町の「岩誦坊クラブ」さんは、30年以上も前からふるさとの山「稲庭岳」の素晴らしさを全国にアピールしたいと、農家の後継者たちが中心となり、「天台の湯」を拠点にさまざまな取り組みを行なってきました。今回、まちづくり元気塾の活動で実際に現地に行ってみて、四季折々の自然の素晴らしさを肌で感じ、そこで暮らす人々のやさしさや人情味に触れ、さらに、そこで採れるおいしい食べ物をご馳走になり、心も体も癒される気持ちになりました。今回は二戸市さんから全面的なバックアップをしていただき、事前視察を含めて全部で4回にわたり元気塾の活動を楽しく展開することができました。また、ワークショップを通じて色々な意見交換やアイデア出しを行ない、パートナーの皆様から具体的なアドバイスをいただく中で、今後の活動のヒントが「岩誦坊の水」のごとくたくさん湧き出てきました。「稲庭岳」をアピールして地域を明るく元気にしたいと願う「岩誦坊クラブ」さんの活動を少しでもお手伝いできたことを嬉しく思っています。

東北電力(株) 二戸営業所長 /高橋 義則氏
チーフパートナー/柳井 雅也氏/東北学院大学 教養学部 教授

3回の派遣を終えて

稲庭岳をどうアピールしていくか、岩誦坊の水を使って何かビジネスはできないか(ペットボトルに詰めるなど)。当初、そうしたところから二戸の元気塾はスタートしました。しかし、地域を見ていくうちに、また地元の方々と触れ合ううちに「もっと大きな視点で考えるべきだ」ということに気づいたのです。雄大な稲庭高原、ブナ林などの自然、いなにわ短角牛や漬け物は美味しいし、何より「人」に個性があって面白い。まさに「お宝の山」と感じ、私たちは、稲庭周辺地域をトータルに見つめ直し、資源を活用した観光プログラムをつくる方向へ舵を切ることに。そのために、第1回では地域資源を活かした商品開発などで実績のある四万十ドラマの畦地さんに講演を、濱さんに資源の掘り起こしをお願いしました。第2回では地域観光の専門家、阿部さんにツアーづくりのワークショップを、そして第3回では濱さんに実行可能なプログラムへと詳細なつくり込みをしていただきました。特に濱さんは、モニターツアー実現に向けた具体的な「手順」を示していただくなど、絶妙な手腕を発揮してくれました。最初「本当にできるのか?」という面持ちだったクラブのみなさんも徐々に顔つきが変わってきましたね。人が成長し、実行可能なプログラムが提示され、最終的には「やるぞ!」という実行宣言にまで漕ぎ着けた今回の元気塾。今、確かな手応えを感じています。

柳井 雅也氏

岩誦坊クラブ パートナー紹介

チーフパートナー

柳井 雅也 東北学院大学 教養学部 教授

宮城県出身。法政大学大学院人文科学研究科地理学修士課程修了。専門分野は経済地理学。まちづくり元気塾:青森県つがる市(平成20年度)、新潟県糸魚川市(平成21年度)を担当。

柳井 雅也

まちづくりパートナー

畦地 履正  (株)四万十ドラマ 代表取締役

高知県出身。平成6年、四万十川流域旧3町村が出資、設立した(株)四万十ドラマに入社。四万十川の地域資源を活かした商品開発や販売に携わり、平成19年より現職。

畦地 履正

まちづくりパートナー

濱 博一 (株)アスリック 代表取締役

静岡県出身。金沢大学工学部建設工学科卒。石川地域づくり協会 コーディネーター、静岡県観光振興アドバイザー。まちづくり元気塾:山形県白鷹町(平成19年度)、新潟県糸魚川市(平成21年度)を担当。

濱 博一

まちづくりパートナー

阿部 昌孝  東北観光推進機構 推進本部 副本部長兼海外事業部長

岩手県出身。国学院大学卒業後渡米しFeld Entertaiment inc入社。平成4年に帰国、JTBグループ(株)東北コミュニケーションズ入社、平成17年7月より(株)JTB東北本社。営業企画部 営業担当部長、交流文化事業部 地域貢献推進部長などを歴任。平成22年7月より現職。

阿部 昌孝

「岩誦坊クラブ」とは

昭和53年、二戸市浄法寺町の「稲庭岳」(標高1078m)をPRしたいと周辺の葉タバコ農家の後継者で結成。地元の名水「岩誦坊」を会の名称とし、地域づくり活動、ボランティア活動を行ってきた。平成13年、温泉宿泊施設「天台の湯」のオープンを機に登山マラソン大会や大滑降ソリ大会を企画・運営。平成15年には稲庭岳頂上への展望台設置や登山道の整備を実施。平成20年からは雪や蕎麦に関するイベントを開催している。

※本文中に記載の役職等は、当時のものです。