障がい者の活躍をより一層促進していくことを目的として、2018年に設立した東北電力フレンドリー・パートナーズ。現在、障がいのある方35名が在籍し、業務に当たっています。今回はオフィスサポート事業部のみなさんに、それぞれの取り組みや思いを伺いました。
東北電力の特例子会社※である東北電力フレンドリー・パートナーズ(以下、TFP)。東北電力本店ビルと、SK仙台ビル、そして昨年5月に開所した福島オフィスの3つの拠点を持ち、管理職のほか指導員12名と一般職(障がいのある方)35名が在籍して業務に取り組んでいます。「東北電力グループにとって大切な仲間であり、そしてともに障がい者雇用に取り組むパートナーである」という思いが社名に込められたTFP。障がいのある方の雇用促進に積極的に取り組む事業者を表彰する「仙台市障害者雇用貢献事業者」として選定されています。
※事業主が障がい者の雇用に配慮した子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして実雇用率を算定できる制度
令和3年度仙台市障害者雇用貢献事業者表彰授与の様子
TFPのロゴ。
作成にあたっては、特別支援学校の生徒の皆さんから広く募集し応募作品をリデザインし決定した。
マークは、「地域社会への貢献や従業員一人ひとりが仕事を通じて成長していくこと」をコンセプトとしている。
TFPは東北電力グループからさまざまな業務を受注しています。資料封入作業や名刺印刷、ノベルティの作成、社内便の仕分け、会場設営のほか、ペーパーレス化を背景とした書類の電子化、不要文書のシュレッダー処分、さらには東北電力本店ビル2階に設置されている「レタスの水耕栽培装置」のサポート業務など、受注する業務は多岐にわたります。最近では東北電力本店ビル周辺の落ち葉清掃も行い、約30日間で200袋以上の落ち葉を集めました。
リスト作成作業
書類の電子化
落ち葉清掃
封入作業
TFPには身体的な障がいのほか、知的な障がいや発達障がいのある方が在籍しており、『パソコンに詳しい』『手先が器用』『見落としなくチェックすることができる』など、社員の皆さんの強みや得意分野は様々。それぞれの社員に対して適切なサポートを行うための準備は、採用前から始まっています。「支援学校の2・3年生を対象とした職場実習を行っているのですが、事前に個人の特性や業務を行う上で配慮する事項などを支援学校から共有いただくようにしています。その上で実習中はよくできていた点や、課題となる点についても本人や保護者の方と対話を行い、採用後の業務配置などの参考にしています。」と語るのはSK仙台ビルでの業務を統括するTFPオフィスサポート事業部の浅野広継副部長。
東北電力フレンドリー・パートナーズ オフィスサポート事業部 副部長 浅野広継さん
社員として採用後は、挨拶や丁寧な言葉遣い、電話応対についてもビジネスマナー研修等の場でよく話し合い、向上心を持って仕事に向き合っているとのこと。また、『マイセルフシート』と呼ばれるシートに毎日の体調や業務結果を記入してもらい、それを基に指導員が必要なアドバイスを行うほか、保護者とも情報共有を行うことで、社員本人だけでなく保護者にも安心していただけるような環境づくりを心掛けているそうです。
オフィスを見回すと、整理整頓がいきわたっているだけでなく、指導員が全体の作業を見渡せるようなフロアレイアウトや、その日のスケジュールや人員の配置が一目で分かるホワイトボードの設置など、さまざまなところで働きやすさにつながる工夫があることに気が付きます。障がいのある方は臨機応変な対応が苦手な方も多いため、業務のマニュアル化や見える化、標準化など、誰にとっても一目で分かりやすい仕組みづくりが大切なのだそう。また、自分の考えを言葉にすることが苦手な方もいるため、指導員がこまめに声を掛けることで気持ちを引き出すことや、社内広報誌『TFPタイムズ』による事業紹介やトピックスなどの発信に積極的に関わってもらうなど、社員の自主性や創造力に配慮しながら各自の経験を増やせるように心掛けているとのことでした。
声掛けやサポートがしやすいよう回遊性を持たせたフロアレイアウト
この日、オフィスには5名の指導員がいて、社員への指示出しや声がけ、フォローなどを丁寧に行っていました。指導員の中には医療・福祉に関する国家資格を有する方や、福祉施設での業務経験がある方もいて、それぞれの経験を生かした適切なサポートが行われています。
また、職場全体として、社員が新たなことに取り組んだり、成功した業務についてはその場でほめる、感謝の言葉を伝えるなどして、社員が気持ちよく働けるようにしているそうです。「社員の表情や取り組みの様子がいつもと違うと感じた場合は、上司や指導員から積極的に声掛けを行うなどして良好な関係を築いている。」との浅野副部長の言葉の通りオフィスは和気あいあいとした楽しい雰囲気に包まれていました。
TFPでは、昨年秋に社員同士のコミュニケーション活性化の目的から、交流会として芋煮会やボッチャ大会を開催しました。交流会では、趣味や家族の話で盛り上がったり従業員同士お互いの意外な一面を知ることができたりと、とてもいい刺激になったそうです。
職場交流会の様子
障がい者雇用に関するノウハウも増え、東北電力グループにとってなくてはならない存在になっているTFP。今後の展望について浅野副部長は、「宮城・福島両県で採用数を増やし、受注業務のさらなる拡大についても検討していく予定です。2025年4月から本格稼働する福島オフィスとともに、これからも社員のみなさんがやりがいを持って働ける環境づくりに取り組んでいきます」と意気込みを語りました。
東北電力本店ビル内で働く菅原柊翔さんと、SK仙台ビル内で働く小和田竜央さん、長屋拡夢さん、八島聡一郎さんに、日々の業務やこれまでの思い出などについてお話を伺いました。
──仕事をする上で、どんなところにやりがいを感じていますか。
菅原さん:「25,000冊以上の図書の照合作業です。4年かけて700箱以上をリストと照合し、終了したときに達成感がありました。」
小和田さん:「不要文書の回収や紙の仕分け、レタス栽培管理、資料のPDF化、落ち葉清掃などの仕事に取り組み、どれもやりがいを感じます。レタス栽培管理では、自分で種をまいて育てたレタスを収穫して食べたときに、とてもおいしく感じました。」
長屋さん:「メモ帳とノートの作成です。デザインなどもみんなで話し合って決めています。最後の工程まで作り終えると、やりがいを感じます。」
八島さん:「自分もメモ帳とノートの作成です。ノベルティの依頼を受けて作るのですが、たくさんの量を依頼されることも多く、全て作り終わって担当の方にお渡しするときに達成感があります。」
──仕事で難しいこと、苦労することはなんですか。
菅原さん:「入社して4年目となり、ほとんどの作業をやってきましたが、特に難しいのが通勤費申請における有料道路の審査です。月に550件ほど作業していますが、区間や金額が合わないことがあり、大変です。」
小和田さん:「会場設営です。まっすぐに引っ張ったタコ糸に合わせてイスや机を整えることや、指示通り設営できているかを確認するのが大変ですが、みんなで協力することで、納得できる仕事につながります。」
長屋さん:「自分も会場設営が難しいです。机の距離が合わないとメジャーで測って揃えることもあり、難しいなと思います。」
八島さん:「私も会場設営が一番苦労します。レイアウトを渡されるのですが、その通りにうまくいかないこともよくあります。」
──TFPタイムズや食堂へのイラスト設置など、新しい業務のアイデアはどのようにして生まれているのでしょうか。
菅原さん:「TFPタイムズはこれまで社内のみで回覧しておりましたが、家族やTFPに関わってくださっている方にも知っていただきたいとの思いから1年かけて準備し、ようやく発行することができました。」
浅野副部長:「食堂へのイラスト設置は、絵を描くことが得意な社員が多くいることから、ノベルティの制作以外にも生かせる場がないか検討し、東北電力本店ビルに勤務する方々が一般職の皆さんが描いた絵を見てホッと一息ついてもらえるといいなと思い、食堂への設置を始めました。皆さん自由な発想で描いてもらっています。」
本店ビルの16階食堂に飾られているイラスト
──図書の照合やカレンダーの制作など、物量の多いお仕事の中で、気を付けていることや工夫していることはありますか。
菅原さん「図書の照合は二人で取り組みます。今は出版年月日を入力する作業をしていますが、見落としがないように指導員に確認するなどして工夫しています。」
小和田さん「カレンダーを作成するときには、印刷をする際に用紙にインクの汚れがついていないか、切った用紙の大きさがきちんとそろっているか、リングをはめる穴にずれが発生していないかを抜け落ちの無いよう一つひとつきちんと確認します。」
──東北電力や東北電力ネットワークの社員とコミュニケーションをとる中で、うれしかったことはありますか
菅原さん「納品したときに、相手の方から『ありがとうございます』と言われたときが一番うれしいです。」
小和田さん「定期的に不要文書の回収をすることで、本店の皆さんと顔を合わせることが多くなりました。あいさつをしっかり交わすことができるとうれしいと感じます。」
菅原 柊翔さん
小和田 竜央さん
長屋 拡夢さん
八島 聡一郎さん
会場設営の様子
卓上カレンダー制作の様子
障がいのある方々に対する理解を深め、雇用の促進を図ることを目的に、日頃培った職業技能を互いに競い合う「障害者技能競技大会(愛称:アビリンピック)」。
昨年は11月22日〜24日にかけて愛知県の愛知県国際展示場(常滑市セントレア)で開催され、TFPからは小和田さんが「オフィスアシスタントの部」宮城県代表として3年連続で出場。金賞該当者「なし」という厳しい戦いの中、2年連続の銀賞に輝きました。
「オフィスアシスタントの部」は文書を発送する作業を競技化したもの。指定された時間内で、手提げ袋に書類・ポケットティッシュ・付箋を入れ込んだり、発送リストや送付状をもとに複数の資料を封入のうえ宛名ラベルを貼ったり、社内便を宛名ごとに仕分けをするなど、単純な中にもスピードと正確さが要求される競技です。
浅野副部長が「職場を挙げて準備しました」と話す通り小和田さんは業務の合間を縫って練習の時間を設け、ときには本番を想定して指導員が試験官役、同僚が選手の役になりきって挑みました。小和田さんは大会を振り返り「大会開始前は少し緊張しましたが、これまでの練習のおかげで本番も集中して取り組みました。これまで上司や社員の皆さんが支えてくださったことを大切に思い、これからも日々の業務を集中して行っていきます」と語りました。
第44回全国アビリンピックにオフィスアシスタント種目で出場し、銀賞を受賞した小和田さん
競技の様子
アビリンピックと同じ会場で同時開催されたのは、障がいのある方々の職業能力や雇用に関する展示、作業体験などを行う「障害者ワークフェア」。TFPも出展し、会場では長屋さん、八島さんを含めた4名が対応に当たりました。
ブースでは作成したカレンダーとポチ袋をセット販売したそうですが、他ブースでカレンダー単品の販売があったこともあり「ポチ袋だけ欲しい」というお客さまが多く、「臨機応変な対応が求められたのが難しかった」と長屋さん。現場で悩んだ結果、ポチ袋だけのセットを作ることでお客さまの要望にしっかりと応えたそうです。「初めての出展ということもあり自分に務まるのかと不安でしたが、選ばれた以上はやるしかないと挑戦しました。大変貴重な経験をさせていただきました」と八島さんは話します。
今回の経験を通して、大きく成長をした社員のみなさん。この経験をもとに、これからもさまざまな業務に挑戦していきます。
障害者ワークフェアの販売ブース
カレンダー用紙は使用済みコピー用紙を原料とする再生紙を使用
販売した2025年卓上カレンダー
セットのポチ袋
TFPが作ったメモ帳やノート(東北電力本店ビル2階)