調査報告書「縄文と自然−環十和田からの発信」の発行について
〜縄文と自然を活かした環十和田プラネット構想の推進〜

平成10年9月18日

 当社は、このたび環十和田プラネット構想の具体的な推進策として、(財)東北開発研究センター(会長 八島俊章)に対して「縄文文化に学ぶ東北の21世紀の地域振興のあり方に関する調査」を委託しておりましたが、このほど調査報告書「縄文と自然−環十和田からの発信」がまとまりましたので、概要についてお知らせいたします。

 東北地方は貴重な縄文の遺跡、遺物を有しており、縄文的な文化が色濃く残された地域とされています。特に、十和田湖を中心とした環十和田地域においては、最近になって、三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき)、伊勢堂岱遺跡(いせどうたいいせき)をはじめとする巨大遺跡の発見が相次ぎ全国的に注目を浴びています。加えて、この地域には十和田湖周辺や世界遺産に選ばれた白神山地など豊かな自然環境も有しています。
 本書は、これら「縄文文化」と「自然環境」という地域資源を21世紀社会に向けて発信し、十分活用していく方策を検討し、環十和田プラネット構想の具体的な推進策としてまとめております。

 具体的には、(1)縄文に関する学術研究機能の集積、(2)「縄文と自然」を活かした観光・ツーリズム、(3)縄文環境博物館の設立、を提言しております。
 縄文に関する学術研究機能の集積に関しては、「縄文学(縄文の文明史的研究、縄文の思想的・現代的意義に関する研究を含めたもの)」の確立を目指すことについての研究者の検討を提唱し、また環十和田地域における埋蔵文化財について、行政機関を中心とした地域連携体制をつくり、発掘の着実な推進、保存と活用の円滑化を図る必要があるとしています。
 「縄文と自然」を活かした観光・ツーリズムに関しては、地域住民全体でかかわる事業という視点で展開される必要があり、北東北3県における広域観光への取り組みと連携すべきとしており、また観光のレジャー的側面だけではなく、体験学習などの教育的側面を持つツーリズムが非常に重要としています。
  縄文環境博物館の設立に関しては、これからの縄文研究に対して、学際的にも、国際的にも総合的な研究が必要であり、国内外からの多分野の研究者が一同に集まる国際総合研究拠点として、環十和田地域に設立すべきとしています。

 本報告書は、環十和田プラネット広域交流圏推進協議会加盟の市町村、民間団体などに配布してご活用いただく他、地域振興に携わる多くの方々にご 活用いただけるものと期待しております。

【報告書概要】

1.タイトル   「縄文と自然―環十和田からの発信」
2.調査研究体制   環十和田プラネット広域交流圏推進協議会の
           代表6市と(社)東北経済連合会で構成する
          研究会を組識して実施
3.報告書構成
(1) 環十和田プラネット構想と構想展開の基本方向
(2) 縄文文化と自然環境〜環十和田地域の二大資源
(3) 「縄文と自然」を活かした環十和田プラネット構想推進の具体策
(4) 環十和田地域における当面の取り組み

4.(添付資料)報告書本編要約

参考) 環十和田プラネット構想とイメージ図

 環十和田プラネット構想は、十和田湖をシンボルとし、青森、岩手、秋田の北東北3県に整備される広域環状高速道路で結ばれる地域を一体的に捉えることにより、北東北における新しい交流圏を形成するものです。

平成7年9月
「環十和田プラネット構想」が発表される。

平成9年2月
「環十和田プラネット構想」の考え方 をとおして新しい広域交流圏の形成実現を目指すため、市町村及び民間団体が環十和田プラネット広域交流圏 推進協議会を設立。

平成10年3月
 全国総合開発計画「21世紀の国土の グランドデザイン−地域の自立の促進と美しい国土の創造−」において、「十和田・八幡平を中心とする地域連携」が東北における施策として取り入 れられる。

以 上

報告書本編要約

1.環十和田プラネット構想と構想展開の基本方向

 平成7年9月に提起された環十和田プラネット構想は、環十和田地域にある市町村、経済団体の理解を得られ、環十和田プラネット広域交流圏推進協議会が発足した。調査、フォーラムの開催などの協議会の活動については、国でも注目するところとなり、今年3月に発表された全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン−地域の自立の促進と美しい国土の創造−」では、「十和田・八幡平を中心とする地域連携」が東北の施策として取り入れられた。
 環十和田地域は、21世紀の経済社会に向けて発信できる優れた「地域資源」、すなわち「縄文文化」と「自然環境」を有しており、この資源を十分に活用する方策を生み出すならば、環十和田地域は、日本の環十和田地域に止まらず、世界の環十和田地域になりうると言える。ただし、そのためには、地域の広域的連携が前提になければならない。これが、環十和田プラネット構想の根底にある考えである。
 今、環十和田地域に必要なことは、国内だけでなく、世界的規模で通じる地域アイデンティティを確立し、それを世界に発信していくことである。「縄文文化」と「自然環境」という二つの地域資源は、その意味では十分に世界を相手に売り出せる価値を持っていると言える。

2.縄文文化と自然環境の連携

 環十和田地域においては、縄文文化という豊かな地域資源の考古学的価値だけでなく、環十和田地域の豊かな自然資源とともに残されている縄文の風土を探りながら、その思想的価値を明らかにしていくことによって、縄文文化を過去の世界に閉じこめるのではなく、縄文文化を現在さらに将来に向けて、新たな形で呼び戻し、生かしていくことができる。「縄文文化」と「自然環境」という豊かな資源を連携させることによって、21世紀に向けた新しいライフスタイルを国内外に示すことができると考えられる。この新しいライフスタイルは、豊かな自然環境を有する環十和田地域において、観光、レクリェーション、体験学習などの手法によって実践することができると考えられる。
 また、縄文文化のメッセージの真髄に「自然との共生」があることを考えると、「縄文文化」と「自然環境」を一体化した「縄文環境学」という研究領域が考えられる。「縄文環境学」は、縄文社会の物質的・精神的全体像を解明するための総合科学としての縄文研究を前提とし、縄文文化が発しているメッセージを読みとり、そこから自然環境と共生していく思想と技術を学びとるとともに、その一方で人間と自然との関わりについての自然科学的、人文科学的研究によって地球環境問題への対応を明らかにすることを目的とする。そして、「縄文学」と「環境学」を統合することによって、自然環境と人間の営みが融合し、持続的に発展していく社会を探求する学問と言える。「縄文環境学」は、研究過程でも国際的展開が重要となるが、研究成果が地球環境問題の解決にもつながることから21世紀の世界文明に対して非常に重要な情報を発信することとなる。

3.「縄文と自然」を活かした環十和田プラネット構想推進の具体策

(1)縄文に関する学術研究機能の集積

 環十和田地域は、膨大な量と高い質を誇る縄文資料を背景にし、また東アジアから太平洋の全体を望める地理的位置を活かした縄文研究拠点としての機能を整備する必要がある。その際、戦後における考古学の発展や最近の縄文研究の動向を取り入れた総合学としての「縄文学(縄文の文明史的研究、縄文の思想的・現代的意義に関する研究を含めたもの)」を目指すことについての研究者の検討が望まれる。
 また、研究拠点形成を支援する地域の取組みとして、環十和田地域における埋蔵文化財について、行政機関を中心とした地域連携体制をつくり、発掘の着実な推進、保存と活用の円滑化を図る必要がある。さらに、縄文による地域アイデンティティの確立を目指すうえでも縄文研究を一般市民に広く開放することが必要である。

(2)「縄文と自然」を活かした観光・ツーリズム

 今、観光旅行は、従来とは違った新しい傾向を有する観光旅行(ここでは、「ツーリズム」と呼ぶ)が大きな流れとして成長していると言える。そこでは、単なる話題性よりは体験・学習によって自らの心の豊かさを満足させる志向が強く、観光スポットや観光イベントというよりも、地域のありのままの姿を率直に提供することが求められるようになっている。
 このような中で、環十和田地域は、「縄文文化」と「自然環境」をキーワードにして、生活の刺激を求める旅から生き方の道標となる旅であることを目指す「新しいライフスタイルへの示唆」と原始のロマンから人類の未来を見る旅を提案する「原始と現代を結ぶ」という2つのコンセプトを持たせることができる。
 環十和田プラネット構想が目指す観光は、地方自治体や特定業者だけでなく、地域住民全体でかかわる事業という視点で展開される必要があり、北東北3県における広域観光への取り組みと連携したものでなければならない。そして、以下の取り組みと課題が考えられる。

 「1」地域観光資源の発掘・評価と活用
「ツーリズム」の視点から、これまで観光資源とは見られなかった地域資源に注目し、埋もれていた、あるいは注目されなかった資源を新しい観点で再評価する。次に、これらの再評価された資源を「縄文と自然」をスローガンにして組み立て、活用を図っていく。その際、「資源の連携」、「資源の物語化」、「資源の体感化」の3点から地域資源を活用する手法が必要である。
 「2」多様な観光プログラムの設計
従来の団体旅行と違って少人数、家族旅行のニーズは多角化している。もう一度来て、別のルート、プログラムを楽しみたいという気持ちを抱かせることにもつながり、継続的に旅行者を呼べる多様な観光プログラムの設計が必要である。
 「3」シンボルとしての十和田湖の整備
十和田湖の求心力の強さは明らかであり、環十和田地域全体としてその輝きを国内外に広げるためには、環十和田地域のシンボルとして十和田湖が存在することをなお一層印象づける必要がある。
 「4」地域をあげたイベント
イベントは、外部にアピールするために効果的手段であり、地域のまとまりをつくるうえでも有効である。特に、環十和田地域では、地域を環状につなげるうえでのイベントを目指すべきである。実際、各地域で「縄文」をテーマにしたイベントや祭りなどが行われているが、これらをつなげるトータルプログラムが必要である。
 「5」地場産業との連携
「縄文と自然」にこだわった、観光と地場産業との連携を図ることによって、各地域の特色ある観光の魅力が創出されるとともに、地域経済の活性化が促されると考えられる。ここでは、観光客向けの特産品販売にとどまらず、作業現場の見学はもとより体験プログラムの設定、生産物の直売の場・機会の創出等が、一つの観光商品・サービスにつながっていくという、地場産業の三次産業化のプロセスが重要となる。
 「6」複合的広域連携
環十和田地域は、広大な面積を有し、また自然、文化の両面で異なる特性を持つ小圏域(中心都市と周辺からなる生活圏)から成り立っているため、初めから、その全域を一つの圏域として取り扱うことが難しい。したがって、この小圏域の単位を一つのまとまりとした観光圏を形成するのも一つの手法である。
 また、環十和田地域では、観光のレジャー的側面だけではなく、体験学習などの教育的側面を持つツーリズムが非常に重要となると考えられる。現在、青少年の精神的荒廃が深刻な問題となっており、その解決策が求められている。その一つが、自然とのふれあい、そして、そこから学ぶいたわりの心にあるとすれば、環十和田地域におけるツーリズムの大きな柱として考えていく必要がある。

(3)縄文環境博物館の設立

 「1」縄文環境博物館の必要性
環十和田地域には、成熟した縄文遺跡が多数分布し、今後さらに発掘・調査・研究が進むことは明らかである。しかも、これからの縄文研究は、学際的にも、国際的にも総合的な研究が必要となっている。したがって、国内外からの多分野の研究者が一同に集まる国際総合研究拠点が必要である。
また、環十和田地域における「縄文と自然」という豊富な研究資源に基づく「縄文環境学」の研究は、地球環境問題を解決する一手段として、自然との共生を目指した人類の新しいライフスタイルを提言する点で国際的に重要である。その拠点を設立することは、国内だけでなく、世界的に意義のあることであり、「縄文と自然」の宝庫である環十和田地域に設立することがもっとも相応しい。
さらに、以上の研究成果については、研究者だけの資産とするのではなく、国民全体の資産として活かさなければならない。そのためには、情報を開示し、研究とその成果を実践できる、一般の人々に開放された拠点が必要である。
 「2」調査研究機能を有する国立博物館の現状と誘致活動
縄文環境博物館の参考となるモデルとして、「国立民族学博物館」、「国立歴史民俗博物館」などが考えられる。また、現在九州においては、「国立九州博物館」の誘致活動が行われており注目される。国立博物館には、財政的規模が大きく、内容の充実が図られることや、県境を越えた研究者の交流がしやすいなどの優位性がある一方で、構想から、博物館実現までに長期間を要することや、国立の施設は地元の自治体で運営ができず、地域に開かれた施設を目指すには、財団、独立行政法人など、地域での受け皿づくりが必要であるなどの問題点がある。
 「3」縄文環境博物館に求められる機能    
a.縄文の国内および国際的総合研究    
b.縄文発掘資料の収蔵管理と情報の一元化    
c.縄文環境学の研究と実践    
d.一般人にひらかれた研究・発信の場
 「4」 縄文環境博物館の形態
縄文環境博物館の施設および機能形態については、一か所に大規模施設として集中立地する方法と既にある各地の博物館・資料館をネットワーク化し、分散立地する方法があるが、この選択については環十和田地域において、自主的に検討する必要がある。
4.環十和田プラネット構想の推進に向けた当面の取り組み

  当面すぐにでも環十和田地域において取り組むべきことについて3点が考えられる。

(1)北東北3県の観光と連携した環十和田プラネット構想の観光戦略の策 定

  環十和田地域は「縄文と自然」をキーワードにした観光施策を実行し、ひとつの広域観光圏を形成しながら、北東北という大きいエリアの観光圏を補完し、強化する役割を果たすべきである。

(2)地域資源の発掘、再評価と資源交流

 地域資源を持ち寄り、様々な観点から地域ごとに交流することが考えられる。地域住民が中心となった地域資源の交流が、イベントの創出や交流を生みだし、これらの積み重ねが全国から人々を呼び込む大きな観光資源となっていくと考えられる。

(3)環十和田地域の埋蔵文化財担当機関及び博物館・歴史資料館の連携

 埋蔵文化財担当機関の連携体制を構築するとともに、博物館・歴史資料館の連携体制の構築も重要である。具体的には、収蔵物の相互貸与、特別展示会・講習会の巡回などが考えられる。

以 上