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現地からのメッセージ

2012.02.08 取材

クルミを拾い集めてください、買い取ります

  • 東日本大震災被災地支援チーム 一般社団法人 SAVE IWATE
    代表理事 寺井良夫氏

山と積まれた個人からの支援物資を仕分けしトラックで被災地へ届ける。時が経ちその活動が一段落すると、被災者の自立支援が次の課題となった。岩手県盛岡市の市民団体、東日本大震災被災地支援チーム「SAVE IWATE」は、ユニークな着想でその道筋をつけようとしている。

東日本大震災被災地支援チーム SAVE IWATE 代表理事 寺井 良夫氏東日本大震災被災地支援チーム SAVE IWATE
代表理事 寺井 良夫氏

支援物資を活用した復興ぞうきん

呆然と立ち尽くす人々。避難者であふれる小学校。震災翌日、岩手県宮古市の被災地を目の当たりにした寺井良夫さんは、何もできずに盛岡まで引き返した。「できることを何でもやろう」。翌3月13日、寺井さんの事務所に集まった6人で市民団体名を「SAVE IWATE」と決めた。地域計画や産業振興の仕事に携わる寺井さんは、町づくりの市民活動にも関わってきた。その仲間たちがホームぺージを立ち上げ、大勢に声をかけて同志を募った。

行政やマスコミの情報が混乱していた4〜5日間は、安否情報を整理して300ページほどの冊子にまとめ、被災地に届けた。それ以後は主に物資の支援。ウェブを通じて呼びかけ、個人からの支援を主眼に置いて受け入れた。「醤油1本、鍋1つからの小さな善意を被災者の皆さんに届けたかった」からだ。それだけに手間がかかる。多種多様な支援物資が入った段ボールの中身を一つひとつ仕分けして品目ごとに詰め替え、旧知の業者に借りた4トントラックで被災地に運んだ。春休みの高校生、大学生が作業に協力した。支援物資の量が増えるにつれ、保管と作業の拠点がどんどん手狭になる。空いた酒蔵、消防団の番屋、廃校の講堂や教室、大学の屋内プールといった場所を次々と借りた。

だが支援物資もだぶついてくる。5月の時点で大量のタオルが余っていた。「被災者の方々にぞうきんを縫ってもらっては?」。そんなアイデアが出た。盛岡の温泉旅館に避難していた人たちに話を持ちかけた。「ヒマを持て余していると、嫌なことばかり思いだして気分が落ち込んでしまう。何か集中できる手仕事があればいいね」と喜んでくれた。カラフルな糸で縫ったぞうきんをSAVE IWATEが1枚200円で買い取り、300円で販売する。100円は包装の印刷や送料にあて、残りを支援活動の資金に。盛岡の商業・観光施設や東京・静岡・兵庫の協力団体を通じて販売したところ、この「復興ぞうきん」は評判を呼び、累計1万5000枚近くを売った。縫い手も100人に及ぶ。

300円で販売している復興ぞうきん。カラフルな糸を使った手縫いである300円で販売している復興ぞうきん。カラフルな糸を使った手縫いである

想いがこもっている、三陸復興カレンダー想いがこもっている、三陸復興カレンダー

「三陸復興カレンダー」の販売収益で

三陸沿岸では大漁や五穀豊饒を祈願する民俗芸能が多く伝承されてきた。こうした祭りや行事には、神に祈りを捧げて災いを鎮める願いもこめられている。今だからこそ民俗芸能のもつ意味が大切、と寺井さんは考え「三陸復興カレンダー 鎮魂と祈りの民俗芸能」を制作した。「民俗芸能は地域のコミュニティを支える役割もあるんです。このカレンダーをかけておけば、被災地のことを忘れずに、いつも思っていてくれるのでは」。5000部印刷し1部1000円で販売した。企業や団体の支援もあり3週間で完売。増刷して1万2000部に達した。その事業収益を原資に、SAVE IWATEでは被災地に仕事を提供している。

被災から半年も経つと、地域で求められるものは支援だけではない。自立のための仕事が必要だ。だが津波ですべてを流され、設備や道具がいる仕事はできない。どうすればよいか。寺井さんは「クルミ」に着目した。三陸沿岸でも河原に行けばクルミはたくさん落ちている。クルミは割って実を取り出す加工が面倒なため、最近は見向きもされない。「けれど、岩手でも年配の人は〈旨味〉のことを〈クルミ味がする〉といったくらい、クルミは本来、おいしい食べもの。落ちているクルミを拾い集める作業であれば誰でもできます」

9月から被災地で「クルミを拾い集めてください。1キロ250円で買い取ります」とチラシを配り、行政の広報やマスコミでも告知。3か月ほどかけ、延べ約330人から23トンのクルミを買い取った。クルミは市内数個所で販売。実を取り出す作業に被災者8名を時給800円で雇用している。老舗和菓子屋「竹芳」がそのクルミを使い、砂糖と醤油でクルミの実を包み込んだ和菓子をつくった。「菓子職人が思わずつまみ食いするほど」と寺井さんが笑うように、なるほど確かにおいしい。まだ収益は出ていないが、「被災者の方々と我々が協力して価値のある商品をつくり、それを買うことによって消費者も被災地を応援できる」こうした事業を継続していきたい、という。補助金や寄付金に頼るだけでなく、自由に使える支援活動資金を確保するためにも必要だ。

集められたクルミは大きさや形などで分類され、保管している集められたクルミは大きさや形などで分類され、保管している

クルミから実を取り出すのも一つひとつ、手作業で行うクルミから実を取り出すのも一つひとつ、手作業で行う

足を運んで感じたことを伝えてほしい

寄付金は減ってきたがSAVE IWATEの活動の輪は広がりつつある。東京にも岩手出身の学生が拠点を設けて家電や布団など大口の支援物資の受け皿になっている。いま力を入れたいのは子どもたちへのケア。大学生のボランティアが勉強をみているが、圧倒的に人手が足りない。「子どもたちは健気で、表向きは元気にふるまっていますが、内面はストレスを抱え込んだまま。夜もまだ眠れないとか、不安を抱える子も‥‥‥」と寺井さんは言葉を詰まらせた。「被災地の現状を見て、被災者と触れ合って、話を聞いてほしい。できればボランティアをしてもらいたいのですが、いいんです、足を運んでいただき、観光して帰るだけでも。その時に感じたことを皆さんに伝えてほしい。それから学校の修学旅行でも、子どもたちに被災地を学んでもらいたいですね」

SAVE IWATEの「三陸復興カレンダー」には三陸沿岸各地の祭りがマッピングされている。その時期に合わせて訪ねてみてはどうだろうか。

とどける 「つくる・おくる・ともす」の現場で [社員の声で綴った記録]
  • 東日本大震災により、太平洋側の火力発電所をはじめとする当社設備は大きな被害を受けました。 本冊子「とどける」は、発電・送電・変電・配電・営業など、 電気を「つくる」・「おくる」・「ともす」のそれぞれの現場で災害復旧に従事した社員の「1秒でも早く電気をお届けしたい」という使命感や、 東北への想いを取りまとめたものです。

    2012年3月

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