医療・福祉施設のBCP対策
災害時に移動手段と電源を確保 地域の安全・安心に貢献する ビジネスEV、e-NV200

地震など万一の災害時にいかに患者や利用者の安全・安心を担保するか? 医療機関・福祉施設にとって避けることのできない課題だ。EV(電気自動車)はBCP(事業継続計画)対策として注目を集め、全国の医療機関・福祉施設での導入が進んでいる。非常時における移動手段の確保、施設への電力供給を目指しEVを導入した2法人に、導入の狙いとそのメリットを聞いた。

Case Study 1
湖山医療福祉グループ 医療法人社団 平成会「介護老人保健施設 ファンコート泉」

EV導入によって災害時の移動手段を確保する

仙台市泉区の介護老人保健施設 ファンコート泉ではオープン時から日産自動車のEV、e-NV200とリーフ計6台を運用している。震災の教訓を生かし、ガソリンが入手困難な状況であっても走行可能なEVによって、災害時の移動手段を確保。地域と共に災害に備え、安全な施設づくり、地域づくりを目指している。

東日本大震災の教訓を生かし災害に強い施設づくりを目指す

医療法人社団 平成会 介護老人保健施設 ファンコート泉 副施設長 根本 雅之 氏 医療法人社団 平成会
介護老人保健施設 ファンコート泉
副施設長
根本 雅之

湖山医療福祉グループは1983年に開設され、日本各地で高齢者施設や療養病床、診療所を運営し、医療と福祉を連携させながら様々なサービスを提供している。

現在では31法人、220サービス拠点、557事業所、10,302人の職員(2018年1月1日現在)を擁する全国規模のグループにまで拡大。同グループはISO 9001(品質マネジメントシステム)を導入し、開設や運営、サービス提供のノウハウなどを全国の法人で共有。一貫してこれまでにないユニークな施設をつくることで、地域に密着し、地域に欠かせない存在になることを目指し続けている。

同グループの医療法人社団 平成会(福島県大沼郡)は2017年6月、仙台市泉区に介護老人保健施設 ファンコート泉をオープンさせた。施設の定員は100人で通所リハビリテーションと居宅介護支援事業所を併設する。

同施設はフロアごとに機能訓練室を完備し、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によって、望む暮らしの実現に向けてのリハビリテーションを実施している。また、フロアごとに専属の栄養士を配置し、食の面から健康をサポートするとともに、言語聴覚士と歯科衛生士を中心とした充実した口腔管理によって新たな疾病の予防に取り組むなど、医療と福祉をトータルに手がける湖山医療福祉グループだからこそ持ちうる視点を生かした特徴を備えている。

同施設を計画するにあたって重視されたのが、東日本大震災の教訓を生かした「災害に強い施設づくり」だった。

湖山医療福祉グループでは、代表である湖山泰成氏の指導のもと、災害に強く、地域の防災の拠点となる施設づくりを進めており、太陽光発電設備を持つ施設や食料や水、燃料などを通常以上に備蓄することのできる施設を整備してきた。また、BCP対策として、食料、水、明かり、暖房など災害時でも最低限の暮らしを担保できるよう県をまたいだグループ各事業所の横の連携強化に努めている。ファンコート泉にもその意思が色濃く反映され、日々のサービス提供だけではなく、利用者、職員、そして地域全体の安全を意識した施設が目指された。

福島県の介護老人保健施設で震災を経験したファンコート泉の副施設長 根本雅之氏は次のように振り返る。

「震災時に最も困ったことの一つが、多くのガソリンスタンドが閉鎖され、燃料不足により、ご利用者と職員の移動手段が確保できなかったことです。利用者の方々の送迎ができず、職員も通勤の手段がないため、施設に泊まり込むことになりました。災害時に移動手段を確保することは大きな課題でした」

対策を模索する中で、浮上したのが日産自動車の商用EV(電気自動車)、e-NV200だった。EVであればガソリンが入手困難であっても走行が可能であり、他のライフラインより比較的復旧が早い電気を使って繰り返し充電し、移動手段を確保することができる。

「EVとガソリン車を両方備えることで、万一の災害に備えることができると考えました」(根本氏)

EVの導入によって災害時の移動手段を確保

ファンコート泉へのEV導入は湖山代表や同会の事業本部長らによって速やかに承認され、オープン時から4台のe-NV200、2台のリーフの運用を開始。通所リハビリテーションや連携する医療機関との送迎に利用されており、専門のドライバーではなく理学療法士や介護士をはじめ様々な立場のスタッフがハンドルを握り、同施設100人の職員のうち半数以上が運転している。

運転のしやすさ、快適性、充電の容易さなど職員からの評判は上々で、EVならではの静粛性によって送迎のために早朝の住宅地に乗り入れても騒音を気にしなくていいのは大きなメリットだという。

ワゴンタイプの広々とした室内は乗降しやすく、走行時の静かさ、振動の少なさが好評だ。

午前中の送迎が終了すると、駐車場にある2本の充電ポールに設置された200Vのコンセントからフル充電し、常に万一の災害に備えている。

「EVの導入によって、災害時にも移動手段を確保することができ、地域の安全・安心に貢献していると感じています」と根本氏は話す。

e-NV200のもう一つの特徴が、車内2カ所に装備されたコンセントから電気を取り出し、家電製品などを使用することができる「パワープラグ」機能だ。ファンコート泉では、お祭りなどのイベント時にホットプレートをつなぎ、焼きそばを提供するなど臨時の電源としても活用している。また、災害時には入居者向けの食事提供の調理に使用したり、利用者の自宅の家電製品に電気を供給したりするなどの活用法も想定しているという。

ワゴンタイプの広々とした室内は乗降しやすく、走行時の静かさ、振動の少なさが好評だ。

燃料コストも大幅に削減 安全・安心な地域づくりを目指す

見逃せないのが、燃料費削減によるランニングコストの圧縮だ。同じ距離を走行した場合の充電による電気代とガソリン代を比較すると、コスト削減が期待でき、施設経営の改善に寄与する。ファンコート泉では燃料費削減による効果を、利用者へのサービス向上や職員の働く環境の改善に活用していく考えだ。

ファンコート泉ではガソリン車を含めて9台の車両を使用し、現在そのうちの6台がEVだが、災害時の移動手段を充実させるため、今後EVを増やしていくことを検討している。

さらに湖山医療福祉グループでは、社会福祉法人湖星会が2018年4月1日に開設する特別養護老人ホーム ラスール泉でもEVを導入している。

「地域の方々と話し合いを重ねることで、私たちの施設と地域の所有する資源を確認し合い、EVを災害時にどのように活用するかを考え、共に地域の安全を構築していくことが重要です。当施設でEVを運用する実績と成果をアピールすることで、そのメリットを十分に理解していただき、日本全国での普及を促したい。そうすることで災害に強い施設と地域づくりに貢献できると考えています」と根本氏は語った。

  • ファンコート泉の駐車場で充電するe-NV200とリーフ。充電用のポールが2本あり、それぞれ2台ずつ充電することができる。充電のための操作は簡単で、誰でも容易に行うことができる。

Case Study 2
医療法人 平成会「八戸平和病院」

EVを活用することで非常時に電力を供給

八戸平和病院や介護老人保健施設、グループホーム、ケアハウスなどを運営する青森県の医療法人 平成会は4台のEVを導入。非常時に各施設へ電力供給できる方策を講じている。また病院の非常用発電機をEVパワーステーションにつなぐことでEVを充電し、持続的に電力を供給する計画を進めている。

ライフラインが寸断され電気の重要性を痛感

医療法人 平成会 用度管理 課長 川守田 春久 氏 医療法人 平成会
用度管理
課長
川守田 春久

医療法人 平成会(青森県八戸市)は中核病院である八戸平和病院(121床)や介護老人保健施設、グループホーム、ケアハウスなどの運営を通して、地域の医療・福祉への貢献を続けている。

医療法人 平成会の用度管理課長 川守田 春久氏は東日本大震災の体験を次のように語る。

「ライフラインが寸断され、3日間電気、ガス、水道が使えませんでした。そのとき電気の重要さを痛感しました。八戸平和病院には非常用発電装置がありますが、老健やグループホームなどの施設にはありません。照明がなく、真っ暗な中で夜を過ごす心細さは、経験してみないとわかりません」

災害時に患者や利用者の安全・安心をいかに担保するか? 食料や水の備蓄は比較的容易だが、電力の確保は難題だ。また、八戸平和病院には透析棟が併設されており、190人の患者が透析治療を受けている。災害時でも透析を中止することはできないが、ガソリンがなければ患者を送迎することができない。当時は多くのガソリンスタンドが閉鎖され、ガソリンの入手が困難だった。

震災での経験を基に、災害への備えを検討していた川守田氏が注目したのは、日産自動車の商用EV、e-NV200だった。

「e-NV200の『走る蓄電池』というコンセプトを聞いたとき、これだと思いました。電気をためておき、EVパワーステーションを通して施設に電気を供給し、照明などを点けられる。さらにガソリンが手に入らなくても患者さんやご利用者を送迎することができます」

同じく震災を経験し、有効な災害対策を模索していた平成会の理事長をはじめとする経営幹部の賛同を得て、EVの導入が迅速に承認された。導入の主たる狙いは災害時の電力供給だが、平成会が以前から取り組んでいるCO2削減と燃料経費の削減にも有効と判断された。

災害時の電力供給に加えCO2と燃料経費を削減

2017年3月に2台のe-NV200と2台のリーフが導入され、EVの運用が開始された。7人乗りのe-NV200は主に老健のデイケアの送迎、5人乗りのリーフは主に透析患者の送迎にと使い分けており、送迎が終わるとEVパワーステーション「LEAF to Home」でスピード充電を行う。

e-NV200に乗った利用者からの感想は、ガソリン車に比べ、振動が少なく、静かで体に負担がかからず、快適と好評だ。EVであっても特別の操作は必要とせず、簡単に充電が行えるので、運用面でも全く負担が生じていないという。

車内2カ所のコンセントから電気を取り出せる「パワープラグ」は、施設のお花見や紅葉狩り、買い物ツアーなどのイベント時に威力を発揮する。重い発電機を運ぶことなく、e-NV200から電源を取り、カラオケ機器やホットプレート、湯沸かしポットなどを利用することができる。

「万一の災害時における電力供給はもちろんですが、走行時に一切のCO2を排出せず、地球温暖化防止に貢献する点も大きい。地域で頼りにされている医療法人だからこそ率先して取り組むことが大事だと考えています。さらに燃料経費もガソリン車に比べて大幅に削減することができ、安い夜間電力を利用することでさらに大きなコスト削減効果が期待できます。充電走行距離も昼間送迎に使っても余裕があり、私たちのような地域に密着した医療法人には十分だと感じています」と川守田氏は話す。

  • EVパワーステーション LEAF to Homeを使って充電するe-NV200。200V普通充電(3kW)と比べて最大2倍(6kW)のスピード充電が可能で、EVにためた電気をオフィス、店舗、家庭などで使用することができる。

非常用発電機でEVを充電 各施設への電力供給を目指す

EVを体験した利用者の多くが「静かで隣に座った人とも話がしやすい。振動が少なく、酔いにくい。体への負担が少なく快適」と話す。 EVを体験した利用者の多くが「静かで隣に座った人とも話がしやすい。振動が少なく、酔いにくい。体への負担が少なく快適」と話す。

平成会ではEVパワーステーション「LEAF to Home」をグループホーム りんごの家(ベッド数18)の配電盤に接続し、e-NV200にためた電気で照明が点くようにしている。2017年の秋に行われた防災訓練では実際にグループホームの照明が点くか実験を行い、成功した。今後さらにEVの数を増やすことで、さらに規模の大きい介護老人保健施設やケアハウスに対しても、EVによる災害時の電力供給を広げていく考えだ。

しかし、e-NV200にためた電気もいずれ使い尽くされ、電力供給ができなくなる。電気が復旧するまでの間、もたせることができるのだろうか?  その問題に対しても川守田氏は解答を用意していた。

「八戸平和病院には4機の非常用発電機が備えられていますが、その電力供給の1系統をEVパワーステーション LEAF to Homeにつなぎ、e-NV200を充電。そこでためた電気を各施設に供給する計画を進めており、2019年夏を目処に実現したいと考えています」

1台のe-NV200のバッテリーにためた電気を使い尽くしても、その間非常用発電機で充電された別のe-NV200を使用することでローテーションし、各施設への電力供給を継続的に行うことが可能になる。そのためe-NV200とEVパワーステーション LEAF to Homeの増強を計画中だ。

平成会によるEV活用は地域の医療機関や福祉施設からも大きな関心を集めているという。

「災害はいつ襲ってくるかわかりません。提供する医療やサービスはもちろん重要ですが、万一の災害時に患者さんやご利用者をお守りし、少しでも快適に過ごしていただく体制づくりもまた重要ではないでしょうか。私たちの電気自動車活用例をモデルケースに、ぜひ災害への備えを真剣に検討していただきたいですね」と川守田氏は締めくくった。

医療機関、福祉施設のEVの導入には、災害時の移動手段とライフラインの確保、CO2削減、燃料コスト削減など数多くのメリットがある。また、非常時に患者、利用者の安全・安心を担保することは、今後、施設づくりの差異化ポイントになりうる。EVの活用によって有効なBCP対策を講じ、災害に強い施設、災害に強い地域を実現していきたい。

EVを体験した利用者の多くが「静かで隣に座った人とも話がしやすい。振動が少なく、酔いにくい。体への負担が少なく快適」と話す。 EVを体験した利用者の多くが「静かで隣に座った人とも話がしやすい。振動が少なく、酔いにくい。体への負担が少なく快適」と話す。

街中での走行に十分な航続可能距離と素早い充電を実現したe-NV200

ゼロ・エミッションと低ランニングコストの両立を可能にする商用EVへの期待は以前から高かった。e-NV200は、そうした声に応えた日産自動車初のバン・ワゴンタイプのビジネスEVだ。

一充電走行距離は190km※と、街中での走行に十分な航続可能距離と素早い充電を実現している。EVパワーステーション LEAF to Homeを使用すればe-NV200にためた電気をオフィスや店舗、家庭の電源として使うことができる。電気料金の安い夜間にためて、昼間に使えば電気代を削減することが可能だ。

ラインアップとして2人乗り・5人乗りのバンと5人乗り・7人乗りのワゴンが用意されている。

  • 車内に設置された100Vコンセント2カ所から電気を取り出すことで、家電製品などを使用することができる「パワープラグ」機能を備える。イベント時など発電機を運ぶ必要がなく、手軽に使用することができる。

※バン2人乗りの場合。一充電走行距離表示は「JC08モード」(国土交通省審査値)。一充電走行距離は定められた試験条件での値であり、使用環境、運転方法、整備状況、積載量に応じて値は異なる。

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