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2007年12月、宮城県は、「自動車関連産業・高度電子機械産業の人材育成に着手」と題した新事業立ち上げの発表を行った。この新事業は「みやぎ自動車関連産業活性化人材養成等事業」と「みやぎ高度電子機械産業活性化人材養成等事業」の2つから成っており、自動車関連産業と高度電子機械産業の県内集積を促進させるため、研究・開発や生産といった企業の事業プロセスの各段階に応じた人材の育成を実施するものである。
特に「みやぎ自動車関連産業活性化人材養成等事業」については、急速な自動車の電子化(カーエレクトロニクス化)に対応した即戦力技術者の育成や地元企業の新規参入に向けた研修を行うほか、県内製造業における将来的な人材確保に向け、高校生を対象とした製造業におけるインターンシップの受入拡充に取り組むものである。
「官」のキーマンである犬飼氏によると、こうした人材育成をベースにした事業は2006年度の「情報産業振興戦略」策定の中から生まれてきたものだという。
犬飼氏は、大手自動車メーカーや多くの関連会社が人材拠点を求め、地方展開を加速させていることをヒントに、宮城県が企業の地方展開の受け皿となり、首都圏や中部圏から事業を獲得するには、良質な人材を供給する拠点になることが必要と考えたのだ。
また、犬飼氏は「人材育成」が最重要ポイントと考え、具体策の立案に向けて精力的に動き始めた。地元産業界・教育界を訪ね、県の考え方に対する理解者をひとりずつ増やしていく作戦をとった。その過程で、元トヨタ自動車の山本氏、元NECの岡田氏、県産業技術総合センターの萱場副所長らから助言を受けながら、産学官連携を模索。その結果、問題意識の共有化が図られ、人材育成機関設立の基礎が固められていった。
一方、セントラル自動車の本社移転が決まるなどの情勢変化を受け、自動車部門のソフト系企業の誘致が重要課題として浮かび上がってきた。犬飼氏によると、宮城県は大学と企業のつながりが他県に比べて弱く、理工系学生の県内就職率が非常に低いという問題があったこともあり、ソフト系技術者の育成に焦点を絞ろうと考えたとのことである。
また、「企業立地促進法」が施行され、国の支援措置が活用できれば事業の実施についての資金的な問題もクリアできるということで、経済産業省に事業計画を提出した。こうして事業計画が「人材養成等支援補助事業」に採択され、当面3年間の予定で人材育成に取り組むこととなったのである。
3月6日、「みやぎカーインテリジェント人材育成センター設立記念カンファレンス」が盛大に行われた。
設立記念カンファレンスに設けられた、体験講座会場
犬飼 章氏
宮城県企画部
情報産業振興室長
東北大学工学部機械工学科卒業後、同年宮城県庁入庁。医療整備課、政策課、東京事務所、秘書課等を経て2006年4月から現職
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ソフト系技術者の養成とはどういった意味を持つのだろうか。「学」のキーマンであり、トヨタ自動車で永年開発に携わり、現在は石巻専修大学で自動車工学、機械工学を教える山本氏は、今、クルマに占めるソフトの比率はどんどん高くなっており、開発もほとんどコンピュータ上で行い、クルマのあらゆる部品がコンピュータで動かされているというのが現実と語る。つまり、ソフト領域の効率性向上が自動車関連企業にとっての大きな課題であり、この分野の優秀な人材獲得は企業の競争力強化に直結するという訳だ。
ところが、大学などでは実践的なソフト領域の教育を行う機会が少ないのが現状である。ソフト領域の実学教育を受けた人材が採用できるとなれば企業の注目度は必ずや上がるはずだ。そこで山本氏は県に対して、クルマというハードを理解しながらソフト計算もできる人材が重要なことを訴えた。山本氏は「学生が専門性を活かしつつ県内で就職できるような状況が夢」と語る。その実現に向けた第一歩が「みやぎカーインテリジェント人材育成センター」の設立である。
一方、「産」のキーマンであり、製造業におけるソフト開発企業のトップを務めたNECソフトウェア東北(株)顧問の岡田氏は、「人材育成センター設立を非常にいい契機ととらえ、学生も社会人も大いに技術を磨いて欲しい。ものづくり産業の中のよりクリエイティブな分野を担える人材を多数輩出することが企業の進出につながるならば、地元での就職機会が増え、学生も、企業も、地元社会も喜ぶ"三方良し"となるはず」と語る。
そのために岡田氏が「みやぎカーインテリジェント人材育成センター」で重要視しているのは、山本氏同様、「実学教育」である。企業が求めている「クルマを理解するIT技術者」の育成である。産・学のキーマンが抱く目的意識、方向性は重なっていた。
山本憲一氏
石巻専修大学 理工学部
機械工学科自動車コース教授
東北大学大学院工学研究科博士課程前期終了後、トヨタ自動車株式会社入社。第1技術部、エンジン統括部を経て現職。現在は、自動車に関する各種解析に従事。専門は機械工学、自動車工学
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即戦力人材育成のための実学教育を指向する「みやぎカーインテリジェント人材育成センター」の取り組みは、宮城、東北の未来にどのような影響を及ぼすのだろうか。
「人材拠点・東北を作り出せるはずだ」と語るのは、山本氏。即戦力が「みやぎカーインテリジェント人材育成センター」から育つことを確信しているという。
山本氏は、「もともと東北の労働力の質は高く、こういう形で大学の研究開発力と企業の技術力が結びついて人材を育てていくことができれば、企業が求めている本当の人材の拠点になれると思う。就職に希望が持てれば、学生は生き生きと学ぶようになるはずだ」と語り、東北で学び、東北で働けるような環境になることを願っている。
岡田氏は「大学レベルの講義と第一線の技術者の技量を組み合わせた実学が学べるカリキュラム」と「学生と社会人がともに切磋琢磨して学ぶ環境」に力点をおき、将来、東北発の自動車を世に送り出すようになってほしいと期待を寄せる。目標に向かって貪欲に努力する東北の人たちが、日本の自動車業界をリードするだけのポテンシャルも、キャパシティも持っていることを岡田氏は信じて疑わない。
最後に犬飼氏は、「海外に進出していた産業が国内回帰する傾向が強まっている中、東北は、その受け皿になるべき」という東北の将来戦略を踏まえながら、センター運営について次のように語り、気を引き締めた。
「まずは『みやぎカーインテリジェント人材育成センター』の成功を、ひとつでも多く積み上げていくことが必要。その上で、他県とも協力しながら、居住環境のよさや労働力の質の高さなど、東北の魅力をアピールしたいと考えている」
宮城県の産・学・官それぞれの大きな期待と夢を乗せて、「みやぎカーインテリジェント人材育成センター」は動き始めた。
岡田勝利氏
NECソフトウエア東北株式会社顧問
大阪大学工学部応用物理学科
卒業後、同年日本電気株式会社(NEC)に入社し、中央官庁の大型システム開発等を担当。2002年、NECソフトウエア東北株式会社代表取締役就任。2007年より現職
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「みやぎカーインテリジェント人材育成センター」は、自動車関連企業の開発部門の立地促進と地元学生の自動車関連企業への就職促進を図るため、宮城県内の大学生や高等専門学生、地元企業の若手技術者を対象に、自動車分野におけるカーエレクトロニクス分野の即戦力技術者を養成する機関である。宮城県と、大手自動車関連企業・地元立地企業10社、県内の国公私立大学・高専・専門学校10校がコンソーシアム(運営会議)を形成し、運営に当たる。具体的には、(1)自動車機能・構造、(2)電子制御、(3)CAE※、(4)評価・計測の4分野で、カーエレクトロニクス技術者養成の研修やセミナーを実施していく。
2008年3月、3つの基礎トレーニングコースの研修が開講。2008年6月には全10コースの講義がスタートし、本格的開講となる。企業、高等教育機関の第一線の人材が講師を務め、実際に企業で使っているソフトウェアなどを使用した実学研修が予定されている。地元学生を主な研修対象者としているが、企業の新人技術者の受講も可能。2008年度の総定員は520名の予定。
| ※CAE: | Computer Aided Engineering の略。コンピュータ技術を活用して製品の設計、製造や工程設計の事前検討の支援を行うこと。 |
*2008年2月 取材
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