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ベンチャーファンドの視点から見る東北への投資

東北イノベーションキャピタル株式会社代表取締役社長 熊谷  巧氏

地域に根ざしたベンチャー企業の発掘、起業

 東北地域においても「産学官」挙げてのベンチャー企業支援の動きが活発化してきている。それぞれの役割を一言でいうならば、「学」の役割は研究で生まれた技術やアイデアの社会への提供であり、「官」に求められるのは総合的な支援インフラの構築であり、「産」はこれらを十分に生かした創意・工夫によって事業化・産業化を図っていくことである。

 激化する一方の国際競争に対し、資源の乏しいわが国が打ち勝っていくためには、大学を中心とした蓄積された研究開発成果を生かし、他の国より一歩進んだハイテク製品を提供し、外貨を獲得することが重要である。東北地域の経済活性化を図る上でも、ハイテクベンチャー企業の育成が急務である。

 こうした大きな流れを受けて、東北初の地元ベンチャーキャピタルとして「東北イノベーションキャピタル(株)」を2003年10月、仙台市に設立した。翌年3月には東北地域の自治体と銀行、日本政策投資銀行、(株)インテリジェント・コスモス研究機構、(社)東北経済連合会、東北電力(株)の出資により「東北インキュベーション投資事業有限責任組合」というベンチャーファンドをスタートさせた。

 ファンドへの出資者、各地域の様々な中小企業等支援機関、大学をはじめとする研究機関、業務提携先などと連携した、唯一の地域密着型VCとしての特長を生かし、本ファンドからのベンチャー企業への投資を通じて、東北経済を活性化させ、結果としてファンド出資者にもリターンをもたらすことが大きなミッションである。

 会社設立以降、東北の各機関の訪問を通じて色々と確認できた。その代表的な例がこれまであまり認識できなかった技術シーズが予想以上に多いということであった。ただ、ベンチャー企業サイドでの課題が多いことも事実である。

東北発、世界に発展するベンチャー企業の育成、支援

 その典型が事業計画書(ビジネスプラン)の書き方とプレゼンテーション能力の向上である。ビジネスプランは、ベンチャー企業にとって資金調達や補助金申請、販売先・提携先確保に重要なものである。この書き方次第でベンチャー企業の将来が決まると言っても過言ではない。経営者の経営理念、経営哲学が相手に対してどう伝わるかも重要である。

 プレゼンテーション能力もベンチャー企業の経営者にとって不可欠の要素である。ベンチャーキャピタルなどの投資家、国の機関・地方自治体などの補助金申請先、販売・提携の候補先に自社のプランを的確に説明する能力である。東北地域で多くのベンチャー企業のプラン発表に立ち合って気が付いたことは、非常に遠慮がちな点である。時には、自信を持って大風呂敷を広げるようなやり方も必要である。それらを含めて評価、判断するのがプロ。だからこそ投資して失敗したとしても、判断したプロの自己責任であり、ベンチャー企業の責任ではない。

 ビジネスプランの充実度とプレゼンテーション能力には大きな相関があり、ベンチャー企業経営者・経営陣の力量が、ものの見事に表われる。どちらか一方が優れているだけではダメで、両方の力を伸ばしていかなければならない。

 また、これまでの投資活動を通じて、単に投資だけでなく、その後の支援活動の重要性を認識している。経営資源の乏しいアーリーステージのベンチャー企業には、投資後のビジネスモデル・プランの再構築、資本政策の立案、アライアンス先の紹介、人材斡旋などの様々な支援策を講じていかなければならない。また、一度の投資だけでなく、数値目標を達成した時点で追加投資する「マイルストーン型」(注1)がベンチャー企業を急成長させる上で必要である。

 東北発の世界で通用するベンチャー企業を支援する仕組みの一つとして、「東北インキュベーションファンド」はスタートした。産学官挙げてベンチャー企業の育成・成長をバックアップすることが、雇用と需要を創出し、地域経済の活性化に結びつくことを確認することができた。成功事例を着実に積み上げていくことで、ファンドのミッション実現に全力を傾注していきたい。

(注1)「マイルストーン型」

 もともとは、里程標、画期的な出来事の意味。ベンチャーにおいては、数値目標をクリアーした段階で 次の追加投資の目安という意味。

ファンドの全体スキーム
東北の企業・自治体、日本政策投資銀行などから出資された資金を、東北インキュベーション投資事業有限責任組合が、ベンチャー企業育成のために投資します。東北イノベーションキャピタルは、それらの運用・出資・分配を行うと同時に、出資者である企業や自治体に情報開示し、協力・連携などのマネジメントを行います。

くまがい こう:宮城県出身 1971年日興証券(現日興コーディアル証券)入社。1989年日興リサーチセンター経営調査部長、2001年日興キャピタル取締役社長。2003年日興アントファクトリー代表取締役会長。日興リサーチセンター在籍時より徹底した現場主義に基づく調査、投資活動を実践。法政大学経営学部大学院非常勤講師、東北大学経済学部非常勤講師など、教歴多数。2003年より現職。

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*2005年2月寄稿原稿

独自の技術を持つ地元企業の支援 東北グロースファンド

 東北イノベーションキャピタルは2006年8月、地域ファンドとしては全国最大規模の投資金額、34億3000万円の「東北グロースファンド」(第2号)を立ち上げた。

 これは、2004年3月に設立した投資金額31億8000万円の「東北インキュベーションファンド」(第1号)に続く第2弾。ちなみに、インキュベーションファンドは、投資対象を新潟を含めた東北7県に事業所を置く大学発ベンチャー企業に絞り、これまで22社に合計23億円の投資を達成している。

 グロースファンドは、1号ファンドのこれまでの経緯を見直し、改善を加えた。大学発ベンチャーの支援だけでは多くの上場企業の創出には結びつかず、地域内の中小企業の育成支援が必要であると考えたからである。

 1号ファンドとの違いは、投資対象をベンチャー企業だけではなく、第2創業に取り組む有力な企業へも広げ、地域内で努力している中小企業の成長を目的としていることにある。これは雇用創出に結びつく中小企業を支援し、地域経済の活性化を図るためである。同時に、大学の知恵を活用する接点としての役割を、ファンドが果たすこともねらいとしている。これらの活動を通し、地域の資源を地元企業が共有して相互の成長を図っていくことを狙いとしている。

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*2007年2月現在

東北イノベーションキャピタル URL http://www.tohoku-innocapital.co.jp