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有機エレクトロニクスバレープロジェクト 有機EL「ホタルの光」を求めて夢の扉を開く有機EL

山形大学 工学部機能高分子工学科 城戸  淳二 氏

●きど じゅんじ:大阪府出身 1984年早稲田大学理工学部応用化学科卒。1989年米国ポリテクニック大学の博士課程を修了し、同年山形大学工学部に赴任。1993年世界初の白色発光有機EL素子の開発に成功。2002年から始まった有機EL国家プロジェクト「高効率有機デバイスの開発」のプロジェクトリーダー。2003年より、山形県有機エレクトロニクス研究所所長。有機ELの世界的権威。

ユニークな発想と努力が育んだ夢の発光体

 炭素を含んだプラスチックなどの有機材料の中には電流を流すと発光するものがある。これは、熱をほとんど出さずに、電気を光に変える現象を利用した発光素子で、現在最も注目されている「有機EL」のことだ。EL(エレクトロ・ルミネッセンス:Electroluminescence)とは、電圧をかけることで物質が励起され、エネルギーを光として放出する現象である。城戸教授の解説では、有機EL素子は直流駆動である発光ダイオードの一種である。素子構造が有機薄膜を2つの電極ではさんだサンドイッチのような構造になっており、電流を流すことによって有機物を発光させる。有機ELでは、イリジウム等の希土類金属(レアアース)を錯体とし、蛍光体や磁性体として利用している。この「希土(キド)」という自分の名前と同じ希土類について研究を始めたことがこの道に進んだきっかけと語る城戸教授だが、今や有機ELでは世界的権威として知られる第一人者である。

 早稲田大学応用化学科を卒業後渡米。ニューヨークのポリテクニック大学で学んだ城戸青年は、プラスチックをバッテリーで光らせるというアイディアに没頭していた。博士課程の最後の1年を有機ELの研究に費やしたが、素子を光らせることはできずに帰国、その後恩師の勧めで1989年に山形大学の助手として赴任した。それから5年間の研究の末、1993年、ついに画期的な発見が生まれた。すでに青色の発光素子を作ることに成功しており、次の課題である赤色発光素子を生み出すため、赤い色素を有機素材に入れる実験をしていた。当時は複数の色素を混ぜれば最も波長の長い赤になるというのが常識だった。しかしある日、研究室の学生が実験に失敗したとき、城戸教授は「赤、緑、青の三原色(RGB)(注1)を薄い濃度で混ぜれば白になるのではないか」とひらめいたという。その後の白色発光の研究過程で、それまで常識だった「有機ELの白色発光はありえない」という概念を覆す発見につながった。それが「有機EL白色発光」である。

(注1)RGB

 光の三原色は、Rはレッド(赤)、Gはグリーン(緑)、Bはブルー(青)で、色の三原色の赤、黄、青とは違う。

デジタルカメラや携帯電話のモニター画面に利用されている有機EL。

厚さ数ミリの薄さのフィルムをディスプレイとして利用できる。このフィルムを利用した室内照明も有望な市場だ。

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可能性の花はどのような実を結ぶか

 有機ELの白色発光に成功した城戸教授の研究成果は、学術誌「サイエンス」に掲載され、世界的な反響を呼び、アメリカの新聞や雑誌もこの成果を大きく取り上げた。2004年秋に上梓された著書「日本のエジソン 城戸淳二の発想」によると、城戸教授は発明王エジソンと誕生日が同じで、白熱電灯を発明したエジソンにならって白色有機ELを発見したと述べている。 蛍光灯とホタルの発光効率を比べると、ホタルの発光効率は100%に近く、10−20%の電球や蛍光灯とは比べ物にならないという。しかもホタルは有機物で形づくられた生命体で、その光はまさに有機の光である。エジソンは白熱灯を、城戸教授が白色有機ELを発明したのも、もともと優れたホタルの発光効率に注目していた城戸教授の発想が具現化した発見だったのである。

 では、この有機ELがなぜ世界的に注目されているのか。有機ELは、特定の有機物に電流を流すと発光する現象を利用した高画質表示装置である。自ら発光するため、これまでの薄型モニターの主流だった液晶のようにバックライトを必要とせず、消費電力も極めて少なくて済む。また、斜めからでも見えるという優れた視認性を持ち、極限までの薄型・軽量化が可能という特徴がある。

 現在、米沢市に設置されている「有機エレクトロニクス研究所」の所長である城戸教授は、「山形有機エレクトロニクスバレー構想」のプロジェクトリーダーでもあり、国家プロジェクトのリーダーでもある。この有機エレクトロニクスバレーの目的は、次世代ディスプレイの本命技術であり、新世紀の照明技術として注目される有機ELを核とした有機エレクトロニクス関連産業の集積による産業創出である。有機エレクトロニクス研究所は、地元企業の技術力と競争力を強化し、新分野進出へのインセンティブ、中堅技術者の人材育成などを担い、共同研究の積極的な受け入れやマーケットを重視した用途開発、ものづくり工房(レンタルラボ)の提供など、有機ELの早期実用化に向けた積極的な取り組みが行われている。こうして市場性、将来性が期待される研究所を設置し、国内における有機エレクトロニクス分野の中心的研究機関として県内外企業への技術移転を目指している。企業との共同研究から用途開発、試作支援、製品化、事業化までサポートしようという、国内のみならず、世界も注目するプロジェクトであり、その中心に城戸教授がいる。SF映画の中でしか見られなかったフィルムのようなディスプレイや、壁面全体が光る照明、フィルム自体が発光する照明など、有機ELの可能性の花は開いたばかりである。どのような実を結ぶのか、今世界中の視線が注がれている。

通称「城戸研」と呼ばれている研究室では、有機ELの薄膜フィルム開発も研究している。

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進出検討企業へのメッセージ

 織物や半導体など、重厚長大とは異なる繊細な技術、そうした地域の技術力を結集して一つの産業を支える素地がここ米沢にあります。東大阪市の「まいど一号」は中小企業と大阪府立大学が連携してロケットを飛ばそうという構想です。これまで米沢の場合は精密機械や半導体の技術力があっても、企業の投資やバックアップがうまく連携していなかったといえます。中小企業と大学・研究室との連携によって新たな分野が開拓されようとしていますが、これからは設備投資や人材への投資が、早期の有機ELディスプレイや照明設備への実用化に弾みをつけることになるでしょう。

 第一の目標は2008年の北京オリンピックを視野に入れた次世代ディスプレイの開発であり、さらに地上デジタル切り替えの2011年までに実用化されなければ市場競争に敗れてしまうという、タイムリミットが迫っています。有機ELの実用化による将来的な市場創出は、ディスプレイ市場では2010年に14-15兆円、照明市場では蛍光灯・白熱灯に替わり、2020年に6000億円を見込んでいます。「有機EL」の研究や技術集積が実現しているこの米沢で、さらに提携企業が増えることは、日本が生き残るため全体のレベルアップに貢献できることだと自負しています。

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*2004年12月取材

城戸研究室 URL http://ckido8.yz.yamagata-u.ac.jp/index.html