
●いわぶち あきら:宮城県出身1974年、東北大学大学院工学研究科機械工学専攻終了後、同専攻助手に。83年に文部省在外研究員として英国ノッティンガム大学へ。1984年より岩手大学工学部機械工学科助手、講師を経て87年から助教授、91年から教授。94年から99年まで、岩手大学地域共同研究センター (現地域連携推進センター)長、2003年から岩手大学工学部附属金型技術研究センター長。2005年5月まで岩手システムネットワーク(INS)運営委員長。現いわて金型研究会会長。
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岩手大学は1987年頃から、大学の研究成果を活用し共同研究を通して地域貢献・社会貢献をするために、地域共同研究センターの設立準備を進めていた。岩手県内における科学技術および研究開発に関する人と情報の交流と活用の活性化を図るために、共同研究を推進し科学技術と新産業の振興を目的に、特に人的な交流連携を展開してきたのが岩手ネットワークシステム(INS)である。INSはその支援組織として地域共同研究センターの活動と歩調を合わせ、地域企業との共同研究を積極的にコーディネートしてきた。その結果、過去20年間の共同研究の累積件数で、全国で11位にランクされ、地域中小企業との共同研究が全体の60%になるなど、着実に大学と地域との連携推進に大きく貢献してきた。
2003年6月の産学官連携会議において、INSが経済産業大臣賞を受賞。また、同年9月、内閣府による「地域おこしに燃える人」には全国から選ばれた33人の中にINSのメンバーが3人も選出される快挙を成し遂げた。現在、岩手大学大学院工学研究科フロンティア材料機能工学専攻の教授であり、工学部附属金型技術研究センター長を務めるのが岩渕明教授。「地域おこしに燃える人の会」に、花巻市起業化支援センターの佐藤利雄さん、岩手県職員の相澤徹さんらと共に選出された。
「『いつも飲んで騒ぐ会』のINSとか、『いつかノーベル賞をさらう会』のINSと、いろいろなキャッチフレーズを使ってPRしてきましたが、本当にまじめにいい仕事をしてきましたよ」とにこやかに話す岩渕教授。現在、INSの研究会は38を数え、カテゴリーも実にバラエティだ。ニューマテリアルから新エネルギー、地熱利用や応用微生物・有機化学、宇宙航空、そして都市デザイン、海洋、社会学、地域づくり、情報システム・・・。金型はもちろん、国際産業交流や地場産業(伝統工芸品支援)など、行政・自治体が望む地域密着型の研究活動も行う。それがINSである。
「地域おこしに燃える人」を受賞。岩渕教授・佐藤利雄氏の顔が見える。上段の写真は、岩手大学発ベンチャー企業(株)アイカムスラボの片野圭二社長と岩渕教授。
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INSは、1987年から産学官の有志が会合をもち、次第に交流の輪を広げ、1992年3月に会則を定め正式な会としてスタートした。87年からの岩渕教授等の積極的な活動が実を結んだ結果である。「『岩手の夢を語る会』というのが前身で自然発生的にスタートした任意団体でした。とにかく、元気になれるもので、やりたいことをやれる範囲で、すぐにやるというというのがモットーでした。1992年に正式な団体となってからは岩手大学地域共同センターと連携した支援組織として様々な活動に乗り出しました。」
例えば、科学技術の研究開発に関する知識の習得と普及という活動では、岩手大学、岩手県立大学の先生を中心に研究会を組織し、専門的な活動を行いながら、専門家が高校生や小中学生を対象とした科学教室を開催、次世代に科学のおもしろさを教える活動も行う。また、共同研究グループの育成事業では、県内企業の研究開発の必要性から産学官の連携を促し、共同研究を企画・推進している。こうしてINSを媒体とした人のネットワークが、今や東北各県はもとより関東、関西など全国に広がっている。
「INSの特徴として、大学主導の交流組織であるため、大学に対する安心感と、人事異動がないため築いたネットワークが途切れないという強みがありました。また会員が個人で参加しているため組織を離れて自由に発言でき、活動も自由にできたということが大きい」という。岩手大学工学部教員が事務局を担い、個人会員900名、法人会員が140社と1000名を超える会員で組織され、38の研究会を組織し地域企業の共同研究を積極的に展開している。岩手大学は地域貢献を目標に地域のシンクタンクとしての役割を担い、大学の敷居を低くする努力を続けてきた。その姿勢が産と官を動かし、さらに民を巻き込み効果的な支援組織として成長してきたのである。
INSが実施する、小中学生向けの科学出前講座。科学に親しむ機会を提供している。右端が岩渕教授。
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岩手県の産業振興という観点からも、製造業から研究開発までできる企業への脱皮を目指し、地域産業の空洞化を防ぐ必要があります。そのために、INSでは大学と地域企業の連携により、多くの大型研究プロジェクトを提案し、研究開発を実施しています。具体的には地域結集共同研究、地域コンソーシアム、都市エリア事業などがあります。この研究シーズは38ある研究会活動を基盤にしており、INS自体が一種のクラスター(ブドウの房)のような集積を形成しているといえます。特に伝統のある金型製造業存続のために、地域コンソーシアム「次世代金型製造プログラムに関する研究開発」を実施し、その後も各種地域新生コンソーシアムを実施しております。その成果として、2004年度には岩手大学発のベンチャー企業の第一号として(株)アイカムス・ラボが誕生しました。また、同年、岩手大学工学部附属金型技術研究センターを設置しました。このようにINSは常に実質的な目標や戦略をたて、ベンチャー、新製品、特許など目に見える成果を上げてきました。また、地域での雇用規模と製造出荷額の増加が地域振興につながるという考えから、景気の低迷による企業の撤退や解雇が発生した場合、有能な人材を活用するためのフォローなども行ってきました。こうしたこともINSの地域貢献に対する一つの姿勢なのです。
*2004年11月取材
