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次世代マイクロシステム MEMS(メムス)エレクトロニクスとメカの融合から生まれる新発想

東北大学未来科学技術共同研究センター教授 江刺  正喜 氏

●えさし まさよし:宮城県出身 1976年東北大学工学部電子工学科卒、同大学院電子工学専攻修士課程、博士課程修了。東北大学工学部助手、1981年、同助教授、1990年に教授。1995年から98年は東北大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)長、大学院工学研究科教授を経て現職。2004年夏に、産学官連携による「MEMSパークコンソーシアム」発足に際し、代表に就任。 1983年、日本IBM科学賞受賞、2001年、SSDM Award 受賞、2004年、文部科学大臣賞受賞。

エレクトロニクス産業を支える技術

 世界の産業界では、微小な電気機械システム・MEMS技術へのニーズが高く、2004年には、世界のMEMS市場の規模は3兆6千億円に達する見込みだという。しかし、高額の製造設備を必要とし、しかも製造工程が複雑で標準化しにくいことから、製品化が難しい問題がある。東北大学未来科学技術共同研究センター(NICHe)の江刺正喜教授を中心とした知的クラスター事業では、(株)メムス・コアと共にパッケージングを中心としたMEMSの研究を進めており、MEMSの機能と生産性を高めるなど、これらの問題解決に取り組んでいる。

 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、マイクロマシンニングと呼ばれる微細加工技術を用い、回路だけではなく微細構造体やセンサ、あるいは機械的に動くアクチュエーター(運動要素)を一体化・集積化したものである。現在、私たちの暮らしに活用されているMEMSは、システムのカギを握る部分に使われている。例えば、自動車の安定走行を制御したり、カメラの手振れ防止をする振動ジャイロ、衝突を検出してエアバッグを膨らませる加速度センサ、あるいは医療用のカテーテル機器など様々な分野にわたる。

 MEMSは毎年20%の割合で成長し続けている。その中でもビデオ・プロジェクターに使うDMD(注1)、あるいは多数のノズルを配列したインクジェットプリントヘッド、さらには今後の携帯情報通信機器などに期待される、回路上にフィルタを形成したチップなどは競争力の高い技術である。

(注1)DMD

 MEMS技術である Digital Mirror Device デジタル・ミラー・デバイス、収束用静電レンズが搭載されているプロジェクター。

ビデオプロジェクタに使うDMD、多数のノズルを配列したインクジェットプリントヘッド、さらなる今後の展開が期待される。

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日本の文化風習にマッチした「オープン・コラボレーション」

 研究室のモットーは、できるだけ情報を共有する「オープン・コラボレーション」である。研究室では、会社から来ている研究員でも公開を原則に研究を行っている。MEMSは多品種で、しかも様々な技術の組み合わせで生み出されるものであり、個々の製品寿命は大量生産品に比べて長いが、逆に少量生産で投資が回収しにくいため、メーカー・中小企業においては、製品化で苦労しているのが実情である。ハイテク設備を使ってMEMSを生産する場合、設備投資の元を取ろうとするには、機械をフル稼働させて多種多様な製品を作る必要がある。しかし、多様な製品を開発するには短時間で効率よくできなければならない。従って、様々な技術情報を早く集め、開発の効率を上げる必要がある。そのために、オープンにして、情報が自由に行き来できる環境を作って取り組むのが、最も効率的ということになる。それが「オープン・コラボレーション」の特長である。

 MEMSの世界では秘密主義ではいけないと語る江刺教授。それはMEMSが他の分野とは異なり、様々な技術の組み合わせによって構成されるものであるため、1つの技術を隠すことで、他の10の技術が入ってこなくなり、滞ってしまうからだという。

 研究室には多くの会社から研究員が派遣されており、共同研究や技術移転を行っている。こうした産学連携はきわめて日本的企業風土にマッチした方法だ。なぜなら、日本には終身雇用という意識が根強く、欧米のように技術を習得した研究員が企業を渡り歩くという風習がないため、大学から会社に技術を持ち帰ることになるからだ。

 江刺研究室で共に研究開発したものを、それぞれの企業が持ち帰って、そこから先の商品開発で競争する、こうした基礎研究をオープンで行うのが最大の特長である。

すべてをオープンにして、情報が自由に行き来できる環境を作って取り組むのが、最も効率的ということになる。

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進出検討企業へのメッセージ

 私たち大学は「サービス業」でなければならないといつも言っています。MEMSの特長は、東北でなければならないという地域性がないということです。それによって、関西でも九州でも海外でも発展的に開発が可能な技術だと思います。しかし、基礎技術はこのオープン・コラボレーションの中にあります。そして、市場のニーズを見ながら、堅実に、安く少量作ってから、次第に大きく発展させるヒントもここにあります。これまで、日本の産業界は海外に進出した企業が多く、それによって産業の空洞化が進みましたが、MEMSは知識を集約した付加価値の高い技術ですので、国内で産業化ができます。多品種の開発にそのつど機器を調達するのではなく、機器を共用し必要なときに必要な人が使う、「コインランドリー方式」(注2)はMEMSに有効です。

 いろいろな技術を組み合わせ、知恵を出し合い新しい発想で新しい技術を開発する場所がここ東北にはあります。

(注2)「コインランドリー方式」

 MEMSの商品開発をそれぞれの企業が独自で設備を用意するのではなく、江刺研究室と参画企業である(株)メムス・コアの研究設備を、「コインランドリーで洗濯をするように気軽に使える」という意味。

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*2004年12月取材

江刺研究室 URL http://www.mems.mech.tohoku.ac.jp/index.html