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プライムアースEVエナジー株式会社 宮城工場

エコカーの未来を東北の地に託す

 トヨタ自動車グループの車載用電池をメインに製造するプライムアースEVエナジーは、ハイブリッド車向けのニッケル水素電池の需要増に応えるため、2010年1月に新工場を稼働させた。全国の候補地から選ばれた進出先は、仙台から約20kmの距離にある宮城県大和町の大和流通・工業団地。静岡県湖西市の2工場(大森工場・境宿工場)に続く第3の製造拠点を東北に構えた狙いと経営の展望を、同社社長の林芳郎氏に伺った。

プライムアースEVエナジー株式会社 宮城工場
代表取締役社長 林芳郎氏

進出の決め手は充実した立地支援策と地域の熱意

 プライムアースEVエナジーが製造するトヨタのハイブリッド車プリウス用のニッケル水素電池は、累計生産台数が100万台(車両台数ベース)に達するまで会社設立(1996年)から10年を費やしたが、200万台への到達はその後2年しかかからなかった。世界の市場にハイブリッド車が急速に普及するようになり、車載用蓄電池の需要が飛躍的に増大したのである。
 大幅な増産の要求に迫られた同社は新工場の建設を決め、2008年に宮城県、大和町と立地協定を締結。その1年半後に工場を稼働させるというスピード竣工を果たした。
「まずは製造ライン1本でのスタートですが、2010年9月までに2ライン増設し、年間30万台の生産能力を持たせる予定です」(林社長)。これによって同社は、静岡県の既存2工場で各40万、宮城工場で30万、合わせて年間110万台もの製造能力を有することになる。
 なぜ、新工場の設置を宮城県に決めたのか。「優秀な人材を確保できることと、速やかに工場を建設できることが進出先に不可欠な条件だった」と林社長は振り返る。北海道から九州まで全国の工業団地をリストアップして有力候補地を絞り、最終的に宮城県大和町に決断した背景には、人材の豊富さや物流の便の良さといった諸条件に加え、県の対応の柔軟さもあったという。「この地はもともと流通団地だったところを、当社が進出するならと“流通・工業団地”への用途替えや工業用水路などのインフラ整備をしていただきました」(林社長)。
 立地企業に対しての助成金や、地元出身者の採用数に応じた設備投資額の還元、減価償却に関する優遇措置など制度面の支援が充実しているだけではなく、工場建設前から始めた従業員の採用に際しては、県内の学校などを会場として提供してくれるといったきめ細かな協力もあり、「地域をあげて当社の進出を熱望してくれていることを肌で感じた」と林社長は語る。

宮城工場で生産している、3代目プリウス用『電池パック』

宮城工場で生産している、3代目プリウス用『電池パック』

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地元企業や大学との厚いパートナーシップを築きたい

 林社長は、地元企業との協力体制の構築にも意欲的だ。「進出した以上はその地域に貢献することが使命なので、部品の調達等はできるだけ宮城県内で賄いたい」とし、例えば電池用のケースを石巻市の電子部品メーカーに発注している。
 ただし、東北にはバッテリー関連の製造経験を持つメーカーがないため、その技術力には未知数のところがある。「当社と技術提携して部品を製造してもらうことになるので、技術吸収力の高いメーカーが望ましい。また、ハイブリッド車が基軸となるこれからの自動車産業に参入しようという意気込みの強さも重要」と林社長。「うちにはこういう技術と人材があるのでこんなことができる」と、メーカーの側が積極的に提案してくることを待ち望んでいるという。
 従業員の採用も「地元から」が基本で、工場稼動開始時の約450人の社員の大半が県内出身者。「素直で礼儀正しく、技術の習得にも前向きで成長が早い」と、林社長は東北出身者の人柄や資質を賞賛する。生産ライン拡大に応じて2010年9月までにさらに100人ほどを増員するが、やはり地元の人材を中心に採用する予定だ。
 仙台市の東北大学との連携も推進したいと林社長は考えている。同大学工学部はモーターや金属材料などでめざましい研究成果をあげているが、今後は電気や電池の分野にも力を入れていく姿勢で、同大学の井上総長は林社長に「研究開発に関してどんどん相談を持ちかけてほしい」と述べたという。優秀な人材を多数輩出している東北大が近くにあるのも、宮城に進出するにあたっての大きな魅力の1つだったと林社長は明かす。

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市場の動向にフレキシブルに対応する

 近年、軽量で蓄電能力が高いリチウムイオン電池への注目度が高まっている。プライムアースEVエナジーは愛知県のトヨタ工場内でリチウムイオン電池も生産しており、プラグインハイブリッド車に搭載される見込みだ。
 だが、市販車での走行実績がまだ少ないリチウムイオン電池が、ニッケル水素電池に替わる次世代型電池の主流となるかどうかは現段階ではわからない、と林社長。
「市場での評価は2〜3年のうちに定まるはずなので、ニーズが高まればリチウムイオン電池の本格的な製造を検討するが、そうでない場合はこれまでどおりニッケル水素電池の生産に力を入れていきたい」と、電池市場の先行きに対して柔軟な見方を示す。
 「いずれにせよ、ハイブリッド車や電気自動車などのエコカーが今後の車社会の中心的な存在になっていくことは間違いなく、車載用蓄電池の需要はますます伸びるはず。あくまでも私見ですが、蓄電容量、重量、耐久性、コストなど全ての面で既存の電池をしのぐ“第3の電池”が開発されるまでは、ニッケル水素電池が主流であり続けるのではないか。当社としては、そうした市場の需要に確実に応えていくつもりです」(林社長)。
 宮城工場の用地は東京ドーム約5個分の面積を持ち、製造ラインを最大限に増設すれば、年間210万台のニッケル水素電池を生産することが可能だ。現在はトヨタのプリウス向けの電池だけを製造しているが、将来的にはプリウス以外のトヨタ車や、トヨタ以外のメーカーへの供給も林社長の視野にある。
「やがて宮城で製造された電池が仙台港から海外へ運ばれるようになるかもしれません。そのとき、宮城工場は製造拠点としてだけではなく、輸出の拠点としても機能することになるでしょう」と林社長。プライムアースEVエナジーが選んだ宮城県には、同社の戦略性を満たすさまざまな“地の利”が整っている。

宮城工場の用地は東京ドーム約5個分(248,300m<sup>2</sup>)の面積を持ち、今後のライン増設にも対応可能である

宮城工場の用地は東京ドーム約5個分(248,300m2)の面積を持ち、今後のライン増設にも対応可能である

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※取材日 2010年2月

プライムアースEVエナジー株式会社 URL http://www.peve.jp