ここからサイト共通メニューです。

サイト共通メニューをスキップします。

東北電力

 

「東北電力第37回中学生作文コンクール」
秀賞

「わかり合う努力で差別を無くそう」
新潟県立長岡聾学校
二年  武藤 悠花

 「えっ、何か悪いことしたのかな。」
 私が何もわからないうちにいじめは始まりました。突然頭を殴られたり、背中を押されたり、知らんぷりされました。「人形みたい」「頭バカだ」と言われました。私が保育園の時のことです。
 私は生まれた時から耳が聞こえません。二歳から長岡聾学校の幼稚部に通い始め、発音や口話の勉強をしていました。幼稚部では、先生方や親と一緒で、聞こえない仲間もいたので特に辛い記憶はありません。しかし、週に一度、交流のために地域の保育園に出かける日があり、ここで私は辛いいじめにあったのです。
 いったい何が悪かったのでしょうか。友達は一人もできたことがなく、私はいつも一人ぼっちでした。先生が何を言っているのかわからないから静かに座っていただけなのに、友達が何で笑っているのかわからないから黙っていただけなのに、次々と失礼なことを言われ、冷たい目で見られました。「もう我慢できない……。」私はついに保育園で泣いてしまいました。でも、先生や両親には言えませんでした。なぜなら、言ってしまうともっといじめが増えるのではないかと思ったからです。いじめはいろいろな形で起こりました。
 ある日の給食でのことです。給食のグループを分ける時、私は「このグループに入れてください。」と言えなくて、遠慮ばかりでした。結局、先生が決めたグループに入ったのですが、意外なことに今まで私をいじめていた子たちが優しく話しかけてきてくれたのです。私はとても嬉しくて、「もう、いじめは終わったのかな。」と思いました。そして、グループを解散する時、「さっき優しくしてくれたからもう一度声をかけよう。」と思って、勇気を出して声をかけました。しかし、さっきの態度とは全然違い、私は完全に無視されたのです。このことは今までの中でも一番ショックでした。どうやら、先生が見ている時はしかられるとまずいからわざと優しくしてくれていたようなのです。それがわかった時、私は本当に暗い気持ちになりました。元気がなくなり、幼いながらも「もう死んでしまいたい。」とまで思い詰めました。両親も先生も、私の様子がおかしいので何度も声をかけてくれました。「どうしたの。」「体調が悪いのかな。」「何かあったらお父さんに言ってごらん。」……。この人たちは私を守ってくれる人たちだと思いましたが、この時の私は「もう嫌だ。助けて。」ということを、自分の心の中だけで繰り返していて、誰にも言うことができませんでした。
 しかし、二ヶ月を過ぎた頃から、もう限界だと思い、私はついに先生に打ち明けました。もっといじめが激しくなっても、もうかまわないと思うくらい、耐えられなかったのです。その子たちは先生にしかられました。そして、しかられる中で初めて、「私が耳が聞こえない」ということを、その子たちは知ったのです。その子たちはびっくりしていました。私もびっくりしました。その子たちは今まで、そのような障害のある人を知らなかったようなのです。
 その後、その子たちは私に謝ってくれました。そして普通に接してくれるようになりました。しかし、この時のいじめは、幼い私の心に深い傷を残しました。この時の悔しさ、苦しさは今でも忘れられません。そして私は今思うのです。「知らないことの怖さ」を。
 私たちは、普段普通に生活していると自分の周りの世界しか見えません。少しでも違うとついそれを特別な目で見がちです。しかしそれでは人と人はいつまでもわかり合うことができないと思うのです。地域の保育園の子たちが私を変な目で見たのは、まず「聾者」を知らなかったことが大きな原因だったのではないかと思います。世界にはいろいろな困難を抱えた人がいます。目や、手足の不自由な人、筋肉や脳に障害を負った人……。また、そのほかにも理由なく差別されている人もいます。黒人、女性、貧困者……。私はそういった事実に対してとても辛い気持ちになります。なぜなら私はいじめられ、差別されることの辛さを自分の体と心で体験しているからです。だから私たちはもっともっと知り合う努力をしなければなりません。私たち聾者も自分の障害を周囲の人に理解してもらえる努力をしなければならないし、健常者にも、いろいろな人間がこの地球の中で共に生きていることを知る努力をしてもらうことが大切だと思います。
 私は去年、聴覚障害者の体験活動に申し込み、ベネズエラに行ってくることができました。そこで学んだことはやはり、人は皆一緒に生きていくのだということです。言葉の壁、障害の壁を乗り越えられるよう、私はこれからも人との関わりを大切にし、お互いの気持ちを伝え合う努力を重ね、新しい扉を開けていきたいです。

 

(C)Tohoku-Electric Power Co.,Inc. All Rights Reserved.