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大原 實さん

新潟県燕(つばめ)市 |

おおはら・みのる
有限会社大原研磨工場代表取締役。中学卒業後、実家の農業を継ぐが2年後に金属研磨に転業。3年間の修行後、工場を開業し、厨房用品の研磨を始める。お客さまの要望に応えようと、何でも磨ける技術を身につけた。複雑な形やスピードを要する研磨には大原研磨の技術が光る。
参考……燕商工会議所 磨き屋シンジケート
http://www.migaki.com/index.shtml
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1から10まで全てを自分一人の手で仕上げる職人がいれば、ものづくりの工程のなかの一部分だけに携わる職人もいる。研磨(けんま)は、ものづくりの最後の仕上げにおこなう。表面を磨(みが)いてザラザラやデコボコをなくし、ツルツルとなめらかにする作業だ。金属も木もプラスチックも、研磨されて初めて製品として完成する。
大原研磨工場は、金属専門の「磨き屋」だ。社長の大原 實さんは農家の長男として燕市に生まれた。燕市はフォークやスプーンをはじめとする洋食器産業の盛んな街。大原社長が中学を卒業した昭和30年代は、その全盛期だった。洋食器の仕上げ仕事、金属研磨も就職先がたくさんあった。「逆に農業は厳しくてね、2年で転業をして金属研磨を始めたんです」と大原社長。まずは仕事を覚えるために研磨工場へ働きに出た。ところが、「とにかく忙しくて、誰もかも人に教えている暇(ひま)がない。仕事は先輩のやることを見て覚えました。昔から職人は『仕事は盗んで覚えろ』と言われていましたから、まさにその通りです」。そこで3年の経験を積んで開業。自ら“盗み取った”技術でさまざまな金属を磨き続けてきた。



磨く場所によって、バフはさまざまな大きさに裁断される。このバフを裁断する機械も大原社長自らがつくっている。 |
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磨く場所によって、バフや機械の形も変わる。写真は容器の内側を磨いているところ。 |
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バイキング料理などの盛りつけに使われるこれらのテーブルウェアも大原研磨工場で磨かれたもの。(撮影協力/三宝産業株式会社) |
あの固い金属を磨くのはなんと布。バフ(★1)と呼ばれる特殊(とくしゅ)な布で、麻や綿などさまざまな種類がある。たくさんのバフから磨く製品の素材に合わせて選び、磨く場所の形に合わせて裁断する。これを機械に取り付けて、モーターで回転させるのだ。1分間で約1400回転。金属をそっと触れさせるだけで火花が飛ぶこともある。この摩擦(まさつ)で磨くのだ。あっというまに曇った金属が、鏡のようにピカピカになる。「研磨することで製品に付加価値を与えているんです。逆に技術がないと研磨で製品をダメにすることもあるんですよ」。研磨技術の基本は見て覚えた。大原社長はさらに技術を向上させるために考え、工夫をし、自分で機械までつくってしまったのだ。「自分が仕事をしやすいように道具づくりからしてしまう。これが職人なんですよ」
「磨ける金属は何でも磨く」。鍋やボウルなどの厨房(ちゅうぼう)(★2)用品をはじめ、車の部品やお神輿(みこし)まで磨く。「研磨の仕事は手も汚れるし派手ではないけど、旅先のホテルなどで自分の磨いたテーブルウエア(★3)が並んでいるのを見るとうれしくてね」と大原社長。どこへ行っても自分の磨いたものが分かるのか、尋ねると「そりゃあ、分かるよ」とピカピカの笑顔で答えてくれた。

| ★1 バフ |
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漢字で表わす場合「羽布」と書く。金属研磨にもさまざまな種類があり、大原研磨工場でおこなっているのは、バフに研磨剤をつけて摩擦で磨く「バフ研磨」。 |
| ★2 厨房 |
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調理する場所。台所や調理場のこと。 |
| ★3 テーブルウエア |
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テーブルに揃える食器類。皿・ナイフ・フォーク・スプーンなどのこと。 |



バフを回転させ、その摩擦で金属を磨く。当てる角度や強さは、職人ならではの技術で調節。
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複雑な形のテーブルウエアも、細かな部分までピカピカに磨かれている。(撮影/三宝産業株式会社) |
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