◎現地からのメッセージ

: 一般社団法人 手づくりマルシェ

やじるし

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事務所兼店舗(maison de Bon まるしぇ)の前に並ぶ「一般社団法人 手づくりマルシェ」の皆さん(左から、篭島千恵穂さん、大堀あゆみさん、齋藤幸子さん、近藤奈々子さん)。事務所兼店舗は温かな雰囲気に満ちていた

事務所兼店舗(maison de Bon まるしぇ)の前に並ぶ「一般社団法人 手づくりマルシェ」の皆さん(左から、篭島千恵穂さん、大堀あゆみさん、齋藤幸子さん、近藤奈々子さん)。事務所兼店舗は温かな雰囲気に満ちていた

人を笑顔にする手づくりの品々

  • 一般社団法人 手づくりマルシェ
  • 代表理事 齋藤 幸子(さいとう・さちこ)氏
  • 統括マネージャー 近藤 奈々子氏(こんどう・ななこ)氏
  • 事務局
  • 大堀 あゆみ氏(おおほり・あゆみ)氏
  • 篭島 千恵穂氏(かごしま・ちえほ)氏

福島の元気をみんなで発信しよう――。そう考えた女性たちが「手づくり品」を軸にイベントを企画・運営し、風評被害の払拭に挑んでいる。目が回るような毎日でも笑顔を絶やさない「一般社団法人 手づくりマルシェ」の方々は、その人柄と明るさでさまざまな人を惹きつけ、新たなうねりをつくり出している。

楽しんでつくったものを広めたい

「福島に対する同じ思いの人たちにたくさん出会えて、つながっていることが宝です」と語る代表理事の齋藤幸子さん。福島の元気をこれからも発信する

「福島に対する同じ思いの人たちにたくさん出会えて、つながっていることが宝です」と語る代表理事の齋藤幸子さん。福島の元気をこれからも発信する

福島市を拠点とする「一般社団法人 手づくりマルシェ」(以下、手づくりマルシェ)は、女性たちが福島の復興を目指して様々な活動を行なっている団体だ。

代表理事の齋藤幸子さんは、震災前はケーキやお菓子づくりの教室を開いたり、NHK文化センターで押し花の講師を務めるだけでなく、老人ホームや病院を回ってスイーツづくり教室のボランティアをするなど、様々な活動に取り組んでいた。

震災後は「なにかしなければ……」という使命感を抱き、それまでの経験を生かして、市内のあづま総合運動公園や土湯温泉で避難生活を送る人たちに「押し花のしおり」をつくるワークショップを開く。「花をさわるだけで癒されます」と喜ぶ人、幸せの象徴である四つ葉のクローバーを摘んできて「どうぞ」とみんなに配る被災者たちと出会う。齋藤さんは「みんなが集まる場ができて、会話が増えて、笑顔が広がる。『これを続けていこう』と思いました」と振り返る。

しばらくは「押し花のしおりづくり」を続けていたが、避難所から仮設住宅へと生活の場が移るにつれ、エコクラフトテープ※1や布小物といった手づくり品の製作が各拠点で始まる。以前からケーキやお菓子づくりを通じてホームメードの楽しさを伝えてきた齋藤さんは、「手づくり品が笑顔をもたらす」ことを知っていた。しかも、沿岸部で暮らしていた人たちには齋藤さんも知らないような素晴らしい品をつくる技術を持っているうえ、互いが講師となって教え合う動きも広がっていた。

それを見た齋藤さんは「みんなが楽しんでつくっている手づくり品を展示して販売したい」と思うようになる。齋藤さんと行動をともにしていた仲間たちと、内閣府復興支援型地域社会雇用創造事業「新たな一歩プロジェクト」に応募して採用された。この助成金をもとに、2013年3月15日、「手づくりマルシェ」を設立した。

1万人が訪れた「ふくしま手づくり市(マルシェ)」

「手づくりマルシェ」は、数多くのイベントや催事を手がけている。メンバー全員の情熱が協力者を引き寄せている

「手づくりマルシェ」は、数多くのイベントや催事を手がけている。メンバー全員の情熱が協力者を引き寄せている

「手づくりマルシェ」の事業は、(1)イベントの企画・運営、(2)手づくり品のワークショップ、(3)福島の農産物を用いたシフォンケーキをはじめとする手づくりスイーツの製造・販売の3つがある。

最初にイベントを開催したのは2013年5月27日。あづま総合運動公園で開いた「ふくしま手づくり市(マルシェ)」だ。50店ほど出店し、およそ1万人が来場。風薫る季節に、並木道で賑やかなマルシェ(市場)が開かれた。

メンバーたちの「仮設住宅で苦労している人たちの、手づくり品を展示し販売したい」という思いは、周囲にも伝わっていった。福島県のホームページで大々的にイベントをPRしてもらうなど、多方面からの協力が集まった。

イベントは、イベント企画会社に依頼せず、「手づくりマルシェ」のメンバーたちで行なった。大規模なイベントで、初めての面もあり苦労したが、これまでの活動のノウハウを生かし、イベントは大成功をおさめた。今後も、年1回のイベントとして開催していく予定だ。

「手づくりマルシェ」のその後の活動には目を見張る。2013年9月には福島交通飯坂線を舞台に2日間開かれた「まるごと!いい電手づくりマルシェ」に参画。これが縁となり、同年12月には飯坂線・曽根田駅に「駅カフェ Bon marche」をオープン。今も毎月1回のペースで営業中だ。

2014年5月18日、2年目となる「ふくしま手づくり市(マルシェ)」を開催し、1万2000人を集めた。前回に比べて県外からの来場者が多かったと齋藤さんはうれしそうに話す。「福島の元気をみんなで発信する」という目標に近づきつつあるからだ。

さらには、福島市の農産物生産者が採れたての野菜や果物を販売する「ふくしまの市」を、2014年度を通じて実施している。1回目は6月14日に、2回目も8月24日に終了している。また、7月20日には福島駅東口で「手づくり市」を開催。さらに、8月1〜2日には福島市羽黒神社の「福島わらじまつり」に出店するなど、大忙しだ。

これからも「福島の元気」を発信し続ける

(写真:上)オリジナルのジャムや果肉入りコンフィチュール。包装やシールもすべて手づくりだ。コップに入っているのは最新作「トマトのコンフィチュールスカッシュ」。煮詰めたトマトを炭酸水で割っているので、トマトが苦手な人でも違和感なく飲める

(写真:中)福島の農産物を用いた無添加のオリジナルシフォンケーキ。ふわふわしっとりしていて美味。「いいだて雪っ娘かぼちゃ」を用いた「かぼちゃのシフォンケーキ」、鈴木養蜂場のはちみつを使った「ハチミツシフォンケーキ」などを製造・販売している

(写真:下)仮設住宅の集会場で手づくりするエコクラフトテープを使った「らんらんランドセルストラップ」(手前)と手芸品の「福うさぎ」(中央)

(写真:上)オリジナルのジャムや果肉入りコンフィチュール。包装やシールもすべて手づくりだ。コップに入っているのは最新作「トマトのコンフィチュールスカッシュ」。煮詰めたトマトを炭酸水で割っているので、トマトが苦手な人でも違和感なく飲める
(写真:中)福島の農産物を用いた無添加のオリジナルシフォンケーキ。ふわふわしっとりしていて美味。「いいだて雪っ娘かぼちゃ」を用いた「かぼちゃのシフォンケーキ」、鈴木養蜂場のはちみつを使った「ハチミツシフォンケーキ」などを製造・販売している
(写真:下)仮設住宅の集会場で手づくりするエコクラフトテープを使った「らんらんランドセルストラップ」(手前)と手芸品の「福うさぎ」(中央)

毎月1回以上イベントを主催もしくは参加するという、傍から見ると恐ろしいほどアグレッシブな「手づくりマルシェ」。その原動力は「福島の元気をみんなで発信しよう」という熱い思いと、メンバー間の仲の良さにある。毎日一緒にいるメンバーは齋藤さんを含めて4名。そのほか週に1回、スイーツとジャムづくりを手伝うメンバーが2名いる。みんなで仕事をシェアして、全員でチャレンジしているのだ。「なにごともみんなで相談するのが基本です」と齋藤さんは言う。

「手づくりマルシェ」の着実な活動実績は、協力者の輪をどんどん広げた。「駅カフェ Bon marche」のFacebookページにコメントを真っ先に寄せたのは郡山市長だ。歩いて数分の距離にある「一般社団法人 ふくしま連携復興センター」とはご近所で互いに行き来している。私たち取材班にもシフォンケーキや果肉入りのコンフィチュールを用意し、手づくりの品々を1つずつ丁寧に説明してくれたように、メンバー全員が熱い思いを秘めつつ前向きですがすがしい。そうした人柄もみんなを惹きつけるのだろう。

今後の展望としては、「手づくりマルシェ」の事務所を兼ねた店舗「maison de Bon まるしぇ」以外にも常設の売り場を広げたいと考えている。さらに、イベントやワークショップでの販売を増やしつつ、インターネットでも販売できる焼き菓子も開発しようとしている。

また、今年スタートしたイベント「ふくしまの市」の活動への賛同者を全国に増やしたいと考えている。福島県に来て、「ふくしまの市」などのイベントに参加し、おいしい農産物や素敵な手づくり品などを地元に帰って広げてもらう。方法はいろいろあるが、福島の農産物や手づくり品を全国にPRするネットワークやつながりを広げていきたいと齋藤さんは考えている。

最後に齋藤さんから全国の人たちへのメッセージを。「福島の元気をこれからもどんどん発信していきますので、みなさんぜひ来て、見て、福島の今を感じてください」。

※1 梱包材料として1960年代に誕生したもの。紙バンドとも言う。現在では主に、米麦の袋や工業用として利用されている。また、手づくりする手芸にも使われている。

※2 「一般社団法人 ふくしま連携復興センター」紹介記事
http://www.tohoku-epco.co.jp/fukyu/report/contents/f32_renkeifukkou/index.html

2014年7月取材