◎現地からのメッセージ

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やじるし

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植木さんはどこに行ってもどんな仕事でも自ら進んで福島県の話をする。「福島に住んでいるけれど、元気にやってるから!」とアピールしたいから

植木さんはどこに行ってもどんな仕事でも自ら進んで福島県の話をする。「福島に住んでいるけれど、元気にやってるから!」とアピールしたいから

24歳、職業はモデル。福島背負ってやってます

  • 株式会社ASPソリューション
  • 植木 安里紗(うえき・ありさ)氏

震災後に会社を辞め、福島県を拠点にフリーランスのモデルとして、たった1人で営業しながらがんばってきた女性がいる。郡山市出身の植木安里紗さんだ。その華やかな容姿からは想像できないほど頑なな一面をもつ彼女に「福島への思い」を聞いた。

震災で強まった「福島」への思い

郡山市にあるお店とのコラボで作った復興ブレス。 植木さんがプロデュースし、現在も購入可能

郡山市にあるお店とのコラボで作った復興ブレス。 植木さんがプロデュースし、現在も購入可能

植木安里紗さんは、子どもの頃から東京の事務所に所属して芸能活動をしていた。しかし、「親に勧められてはじめましたが、東京へ行くにも、オーディションを受けるにもお金がかかりますし、あまり熱心ではありませんでした」と振り返る。

上京して本格的に芸能活動をする道もあったし、母親にもそう勧められたというが、植木さんには福島県(以下、福島)を離れる気はみじんもなかった。

高校卒業後はものづくりに携わりたくて福島県内のメーカーに就職。製造ラインに入って手足を動かし、製品をつくり出したかったが、正社員だったため、派遣・パート社員の管理や検査などを担当。一度就職したからには3年は勤めなければと思いながらも、想像していたのとは違う日々に悶々としていた。そこで、福島を拠点にモデルとして活動できないかと別の道を模索しはじめる。就職して間もなく丸3年を迎えようというとき、震災が起きた。津波による被害、そして福島第一原子力発電所の事故で福島の人々は深く傷ついた。今ここでやらなければいつやるんだ?―。その思いに駆られ、2011年5月から東京や仙台に足を運び、モデルとしての実績をつくろうと動きはじめる。2011年7月に退社し、晴れてモデルへの道を歩き出した。

風評被害を払拭したい

「なぜ福島で、しかもモデルの仕事を選んだのか?」。 理由は2つあった。

1つは、モデルを使う仕事がある場合、福島では東京や仙台に人材を求めることがほとんどだということ。福島が大好きな植木さんは、「東京ではなくて、地元の私みたいなモデルが1人くらいいてもいいんじゃない?」と考えたのだ。

2つめは、2011年の秋、福島で行なわれた映画のロケに参加したときの出来事。東京から来た他の出演者たちは、植木さんが福島県民とは知らずに「福島には人住んでないでしょ?」と言っていたのだ。「福島は人が住めない場所と思われていたのです……」と植木さんはショックを受けた。

この強烈な経験をしてから、植木さんはどこに行っても福島のことを自分から積極的に話すようになった。福島の良さをアピールする道を選ぶ。「23歳、福島背負ってます」というバナーをつくり、自身のブログに貼ったことさえあった。

風評被害を払拭したい。そこでチャレンジしたのが「第48代ミスうねめ&ミスこおりやま」だ。6人のメンバーの一員に見事選ばれ、2012年8月から1年間、全国を巡って郡山市のPRに努めた。次に「2013ミスピーチキャンペーンクルー」に応募し、合格。2013年6月から1年間、桃をはじめとする福島産の農産物のPRに取り組んでいる。「3年ぶりの出荷となったあんぽ柿のPRに携われたことは、とても印象的でした」と感慨深げに語った。

新しい仲間たちと新たなチャレンジ

3.11に開催される福魂祭に出演予定の南会津の子どもたちと一緒に。植木さんはMCを務める

3.11に開催される福魂祭に出演予定の南会津の子どもたちと一緒に。植木さんはMCを務める

地道に1人で営業しながら実績を積み重ねてきたことで、最近では福島の企業からも仕事の声がかかるようになった。「モデルが必要なときはぜひ気軽に声を掛けていただきたいです」と微笑む

地道に1人で営業しながら実績を積み重ねてきたことで、最近では福島の企業からも仕事の声がかかるようになった。「モデルが必要なときはぜひ気軽に声を掛けていただきたいです」と微笑む

華やかな外見とは異なり、植木さんはかなり気骨ある人だ。フリーランスで活動してきたのは「1人で生きていきたいし、嫌なことはやりたくないから」。例えば、水着の仕事は引き受けたくないからと、某飲料メーカーのイメージガールの仕事を打診されたときもキッパリ断った。「東京の事務所と契約しなければいけなかったんです。福島が大好きなのに東京には住みたくない。自分の気持ちに正直に生きようと思ったのです」と笑う。

1人にこだわってきた植木さんだが、2014年1月から株式会社ASPソリューション(以下、ASP)と契約を結んだ。ASPは毎年3月11日に開催される「福魂祭(ふっこんさい)」の企画・運営をサポートする広告代理店。代表取締役の玉木幹人さんは植木さんと話をする中で「23歳、福島背負ってます」というバナーを貼っていたことを聞き、契約を結びたいと申し出た。

「彼女の福島に対する気持ちは本物ですね。1人で活動してきた実績があるので、私たちはほんの少しの支えになれればと思っています」と玉木さんは話す。

植木さんもまた、福島のための活動をもっと広げたい一方で1人で全てをこなすことに限界を感じていたところだった。玉木さんとその周囲に集まる「福島への熱い思い」を抱く人たちに出会い、「この人たちとなら一緒にやってみたい」と思ったそうだ。植木さんは「福魂祭」でMC(司会者)を務める。「なんでも東京一極集中はつまらない。福島から全国へ飛び出す人がいてもいいでしょ?」と話す植木さん。たしかに私たちは「モデルやタレントは東京だからこそ成り立つ」という固定観念にとらわれているかもしれない。新しくできた仲間たちと新たなステージに進もうとする植木さんにぜひ注目してほしい。

2014年2月取材