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株式会社フミン URL

株式会社 フミン

福島県福島市 省エネ塗装技術

震災のダメージを乗り越えて甦る福島の小さなグローバル企業

企業データ

株式会社フミン

所在地:
〒960-8161 福島県福島市郷野目字上21
代表者:
代表取締役 八木澤勝夫
設立年:
1978年(株式会社 福島沢井として設立)
従業員数:
4名
事業内容:
(1)農業用資材・環境対策資材の製造・販売 (2)近赤外線カット・紫外線カット・ガラスコーティング事業
TEL:
024-544-0223
FAX:
024-545-0620
主要グループ会社:
Fuminn Pte Ltd.(シンガポール)、FUMIN GLOBAL(香港)
URL:
http://www.fumin.jp/

国立新美術館(東京都港区六本木)の塗装風景。室内に足場を組み、ガラスにスプレーを吹き付けてコーティングするので施工が簡単で劣化も少ない

福島市のたった4人の会社が世界の注目を集めている。スプレーガンで建物の窓ガラスに塗布するだけで赤外線と紫外線を吸収し、省エネと地球温暖化防止につながる「フミンコーティング」。日本とアジア諸国を始め、国際特許を取得・申請中の画期的な環境技術だ。この技術を開発した株式会社フミンは、医薬品の卸売業から転じ、外部資源との連携によって高収益構造を成し遂げた。

ガラスに塗るだけで赤外線と紫外線を吸収

国立新美術館のガラスにもフミンコーティングが施されている。1週間ですべて吹きつけた国立新美術館のガラスにもフミンコーティングが施されている。1週間ですべて吹きつけた

一枚の板ガラス。半分は素通しのガラス面で、もう半分にフミンが開発した省エネ塗装(以下、フミンコーティング)が施してある。ほとんど透明度は同じで、見た目だけではその違いはわからない。ところが、ガラス越しに赤外線ライトを横顔に受けてみると、体感温度がまるで違う。素通しのガラス面のほうは強烈に熱く、フミンコーティングのガラス面のほうは優しく暖かい。

専用塗料をスプレーガンで窓ガラスに塗布するだけで赤外線を約50%、紫外線を約90%吸収し、室内への侵入を防げるのがフミンコーティング。暑さの原因となる赤外線を吸収するので夏は室温を2〜5℃下げられ、紫外線の吸収によって室内の日焼けも防げる。冬は室内の熱を吸収するので窓際の冷放射を解消し、結露が起きにくい。冷暖房費の節約になる省エネ技術なのだ。しかも可視光線透過率80%なので、室外の景観や室内の明るさにほとんど影響を与えない。フィルムではないから張り替えは要らず、金網入りや曲面、大小問わずどんなガラスにも、また屋外・屋内にも施工でき、耐久年数は約10年と長い。

「現在、広く普及している断熱ガラスは太陽光を乱反射させて遮熱するLow-E(低放射)ガラス。ところが、これだと熱風が上空に飛び、ヒートアイランド現象を引き起こします。フミンコーティングは太陽光の赤外線や紫外線を反射ではなく吸収するのでヒートアイランド現象を抑制する効果があるのです」と、創業者であり開発者の八木澤勝夫社長は環境技術としての側面を力説する。

現に、この新技術にいち早く飛びついたのが、ゲリラ豪雨による市街地の水没に悩まされるシンガポール。2006年、八木澤社長は経済産業省東北経産局の求めに応じ、東京証券取引所の「トウホクビジネスマッチングin東証アローズ」でプレゼンテーションを行なった。時事通信社の支局を通じてその情報を知ったシンガポール政府は、同国の展示会への出展依頼のみならず、政府要人を前にしてのプレゼンの機会を与えるほど熱心だった。07年1月、フミンは「紫外線遮蔽剤や赤外線遮蔽剤を含有した塗膜を形成する塗装方法」で国内特許を取得。同年7月にはシンガポールに現地法人を設立し施工実績を重ね、08年11月に同国の特許も取得した。

以来、コスト削減とCO2対策を両立させたガラスコーティングの技術に引き合いが殺到し、福島のたった4人の会社が国内外から熱い注目を集めている。

大病を克服し、ひらめきで勝負する「ミスターX」

だが、この画期的な新技術が誕生するまでには人生の一大転機があった。外資系製薬会社を退職して独立し、医薬品の卸売業で稼いでいた八木澤社長は41歳のとき大量に吐血し、入院する。

九死に一生を得たが「もう神経をすり減らすカネ儲けはたくさん」と2000年に始めた新事業が、海洋の珪藻土地層から採取した抗菌作用のある「フミン物質」を利用した天然農業資材の開発・販売。社名の由来はここからで、さらには製品名「MR-X(エムアールエックス)」も「フミン物質の抗菌作用について研究を依頼した東大生産技術研究所の篠塚先生から〈言ってる内容はよくわからないんだけれど、確かにその通りになる。あなたは不思議な人ですねえ〉と付けられたあだな〈ミスターX〉の意味にした」と八木澤社長は笑う。

アポイントをとって営業するのではなく、展示会に出展して広くアピールする販促方法に仕事のスタイルを切り替えた。成分に微量ミネラルとアミノ酸類がバランス良く含まれており、水稲も野菜も果物も作物本来のうまみが増すMR-XはJA全農福島、同にいがたの指定認定を受け、よく売れた。

「ホッと一息ついたとき、ふと会社の窓ガラスを見たら結露していました。ガラスが熱を吸収すれば結露せず、太陽光の遮熱効果もあるはず。携帯電話の端末は初期のころよく熱くなっていましたよね?調べたら、端末に塗布されたアンチモンドープ酸化スズ(ATO)という金属酸化物が熱を吸収していた。これを主成分とする透明な塗料を開発すればいいのでは、と考えたんです」

塗料メーカーと共同で三百数十回の試作を重ね、最もふさわしい配合を決めた。立ちはだかった壁は、どうやって垂直の窓に均一の厚さに塗るか。スポンジでも、上から下へ流し込む方法でも、スプレーガンで霧状に噴射しても、塗装はまだらになってうまくいかない。

そんなある日、雨天でハンドルを握っていたときのこと。ワイパーを止めるとフロントガラスに雨粒がつながって面状に覆っていた。「これだ!」と八木澤社長は膝を打つ。スプレーガンのノズルの穴を少し大きくして、雨粒大の粒子を適度なスピードで噴射すると、ちょうど空気のベルトコンベアに乗っているような状態で塗料がガラス面に行き渡り、風の流れに押さえられて均質な膜をかたちづくった。表面張力が働いて重力が小さくなり、垂れ下がる前に乾く。

2005年6月、着想を得てから約3年でフミンコーティングは完成した。

積極的な海外展開は「進出」ではなく「提案」

フミンコーティングは日本を始め、シンガポール、マレーシア、インドネシア、オーストラリアで特許を取得し、中国、EU、米国、インド、韓国、台湾で特許を申請中。建物の窓だけでなく、空調の省エネが課題となる電気自動車の窓ガラスへの応用も、自動車部品メーカーと検討し始めた。

今年度の売上は4〜5億円に達する見込みだ。特許の使用料が主な収益源となる。利益率は8割に及ぶ。専用塗料の製造は塗料メーカーに委託し、施工は代理店と契約を結び、海外との窓口は商社に任せている。外部資源とうまく連携し、設備投資と人件費を極力抑える--- 中小企業が独自技術で市場開拓する見本のような経営戦略といえるだろう。

それでも、国際特許が増えると、その維持管理だけでも人手は足りない。「目下の課題は人。社員を20人程度には増やしたい」と八木澤社長はいう。

「目線を変えれば、不景気ではないんですよ。誰もが同じところ、しかも上ばかり見ているから行き詰まるのではないですか。もっと身近な足下を見れば、何かきっと、タネが落ちているものです。MR-Xも、もともとは医薬品の仕事で病院を回っていたときに、入院病棟のアンモニア臭を消す消臭剤にフミンを利用できないか、と考えたのがきっかけでした」

海外での市場開拓も「進出」ではない、という。「一緒にやりませんか」という「提案」だ。一人勝ちではなく、みんなが幸せになってこその環境技術。八木澤社長の「身近なところを見る」というのは、弱い立場の人の身になって考える、という意味でもある。東京都多摩市の「多摩草むらの会」のように、知的障がいのある人たちに雇用の場を提供している代理店とも施工契約を結んでいる。

「カネ儲け一辺倒」から「人の役に立つ仕事」へ。大病を患った末にたどりついた発想の転換が、フミンの今後の躍進を支えていくにちがいない。

2011年2月取材

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