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株式会社サイバー・ソリューションズ
宮城県仙台市 ITベンチャー
ネットワークの可能性に挑む東北発のITベンチャー
企業データ
株式会社サイバー・ソリューションズ
- 所在地:
- 〒989-3204 宮城県仙台市青葉区南吉成六丁目6-3 ICRビル3F
- 代表者:
- 代表取締役社長 キニ グレン マンスフィールド
- 設立年:
- 1997年
- 従業員数:
- 18名
- 事業内容:
- コンピュータネットワークのセキュリティ関連製品・サービスの開発・提供
- TEL:
- 022-303-4012
- FAX:
- 022-303-4015
インターネット上の住所を表す「IPアドレス」。これがまもなく枯渇するというニュースを目にするが、この問題の解決策は現在の「IPv4」を次世代の通信プロトコル技術「IPv6」へ移行することだ。移行時の混乱が心配されているなか、宮城県仙台市の株式会社サイバー・ソリューションズは、IPv6に対応したイントラネット監視システムを国内で初めて開発した。すでに韓国の企業と販売契約を結んでおり、海外市場進出は目前に迫っている。
国内初の「IPv6」に対応した監視システム
イントラネットのセキュリティシステムやサービスを開発・提供しているサイバー・ソリューションズのオフィス
「IPアドレスの枯渇問題」をご存じだろうか。現行のIPアドレスは約43億個ある。ところが世界的なインターネットの普及とスマートフォンなど新たな情報通信機器の登場で需要が増え、ほぼ使い果たした。現行のプロトコル「IPv4」に代わる次世代技術として「IPv6」が開発されたのだが、両者は似て非なるもの。これから始まる移行期間に混乱が生ずるのでは、と危ぶまれている。
そんななか、国内で初めてIPv6に対応したイントラネット監視システムが2010年10月に発表された。開発したのは仙台市に拠点を置く株式会社サイバー・ソリューションズだ。
このシステムは、社内ネットワークなどにアクセスした不正な端末(PCなど)を検知して場所を特定し、通信を遮断するもの。ビルのセキュリティシステムと似ていると言えばわかりやすいだろう。ビル内のどの部屋に誰が入室しているかを常に把握しているのと同じように、ネットワークに誰がいつ接続していて、そのあいだ何をしていたかを監視する。登録されていない何者かが侵入したら、まずはそこを遮断するという技術である。
サイバー・ソリューションズは、イントラネットのセキュリティシステムやサービスを開発・提供しているITベンチャーだ。今回発表したのは、従来から販売していた「NetSkateKoban」というシステムをIPv6に対応させたバージョンアップ版である。
「NetSkateKoban」は「ネット助っ人交番」と読む。「ネット(ワークの)助っ人(をする)交番(見張り役)」という意味だ。企業にとって大きな経営リスクである情報漏えい対策に役立つうえ、IPv6対応は国内初。反響は大きく、2011年1月には早くも韓国の上場企業「Millinet」と販売に関するパートナーシップ契約を結んだ。
誰もやらなかった「インターネットのマネジメント」
創業者のキニ グレン マンスフィールド社長は母国インドでコンピュータソフトウエアを開発していたが、1982年に日本で始まった「第五世代コンピュータ」のプロジェクトに興味を抱き来日。東北大学・野口正一教授の指導のもと、博士課程を修了。大型計算機センターの助手を経て、株式会社高度通信システム研究所に客員研究員として勤めていたなど、来日当初は人工知能や論理型プログラムを研究していた。「最初からネットワークに興味があったわけではないのです」とは意外だが、ネットワークの研究をはじめるとたちまちインターネットに引き込まれる。80年代後半はインターネットの黎明期だった。
起業する前からマンスフィールド社長の活動拠点となっているICR
「インターネットにはまだ形がなかったので、自分のアイディアがよければ採用されて全世界の標準になる。とても興奮しました」
もう一つ理由があった。初期のインターネットは「自由な空間」。なんでもありの世界だったがゆえに、マネジメントの概念がなかった。マンスフィールド社長は「インド国内で企業に勤めた経験があったので、管理するという考え方は当然のこと。インターネットにはその概念がなかったので、私が監視・管理の手法を研究して標準化できれば」と考えた。
インターネットの監視・管理システムをゼロから研究する日々。だが、苦労して開発してもどの企業も買わなかった。インターネットの認知度が低いうえ、研究者はUNIX、一般社会はWindowsとOSが違う。「ものすごくショックでした」とマンスフィールド社長は振り返る。
勤務していた高度通信システム研究所は7年間限定の組織。閉鎖が迫っていた。「インドの会社に戻ればソフトウエアの開発が、大学に戻ればみんなが相手にしてくれないシステムの研究が待っている(笑)。どちらも気が進まないし、今までつくったものを捨てたくない。だったら自分でやってみよう」とマンスフィールド社長は起業を決意する。97年、高度通信システム研究所があったICR*にオフィスを構えた。これが偶然にも次のステップにつながる。
監視・管理ではなく「セキュリティ」なら売れる
ICRで入手した1通のEメール。これがIPA(現・独立行政法人 情報処理推進機構)との出会いだった。日本人の友人と2人で夜な夜な提案書を書いて提出し、見事にIPAの研究開発プログラムに採用された。研究名は「インターネットオリエンテーリング可能な地図構成法に関する研究」。簡単に言うと「インターネットの地図づくり」を提案したのだ。
昔からネットワークの管理・運用を目指してきたマンスフィールド社長にとって、インターネットの全体像をつかみたいのに、地図がないのは不満だった。「だったら私がつくってしまおう」とIPAの支援を受けながら研究を続け、「地図を自動発見する技術」を見つけた。組織内から世界中のプロバイダーの関係までわかるインターネットの世界地図だ。
IPAからは高く評価された。しかし、また誰も買ってくれなかった。「今度はユーザー側の問題でした。なぜ監視や管理が必要なの?と言われて……」
ここでアイディアが浮かんだ。「ネットワークの監視・管理」と言っても誰も買わないが、「セキュリティ」と言えば買ってもらえるんじゃないか――。
2000年前後はサイトやシステムを攻撃する事件が頻発し、世間が「セキュリティ」に目を向け始めた時期だった。ネットワークを適切に管理・運用しているのなら、セキュリティも万全なはずというロジックをもとに研究を続けた。ただし、資本力のある様々な会社は既にやっていた。そこで、他でやっていない自分達のオリジナルな視点を考えた。それは「攻撃は外からだけとは限らない」つまりネットワークの内側にも敵があり得ることに着目したのだ。
「セキュリティと言うと『敵は外から来る』と考えがちですが、情報漏洩など本当に深刻な問題は内部から起こっている」と気づいたのだ。
追い風は個人情報保護法**だ。2003年5月に成立し、2005年4月1日に全面施行となった。世間の関心は一気に高まり、サイバー・ソリューションズは電力会社や大手製造メーカー、官公庁、自治体と契約。各々数千〜数万台の端末をNetSkateKobanが今も監視している。
顧客のリクエストから生まれる新たな技術
2011年1月、韓国Millnet社とNetSkateシリーズを販売するパートナーシップ契約を締結した
NetSkateKobanの強みは、過剰な設備投資が不要で、ネットワークに負荷をかけずにセキュリティを確保できる点にある。これは最初の「地図づくり」と同じ方法論だ。
「たとえ人間がネットワークの全体像がわかっていなくても、情報はきちんと相手に届く。ということは、ネットワーク自身には全体像がわかっているのです。『地図』がつくれたのと同じように、イントラネットもスイッチやルータなどのつなぎ手に聞きに行けばいい」
NetSkateKobanは、ネットワーク機器の入れ替えが不要。「ネットワークから得られる情報だけを使って管理を実現するシステム」と考えればいいだろう。
サイバー・ソリューションズは営業と開発の距離が近い。NetSkateKobanはスイッチ、ルータ、Virtual LANなど顧客のネットワーク環境に応じた構成が可能なのはそのためだ。実は、IPv6対応のNetSkateKobanも「IPv6対応の製品がほしい」という顧客の要望にこたえたものである。
ネットワークという異空間に限りなき可能性を見出し、自ら考えたシステムを投入してきたマンスフィールド社長は「解決が難しい問題に出会うとわくわくします」と笑う。サイバー・ソリューションズは海外進出を含めて新たなステージに進むが、これからもさまざまな課題に挑んでいくに違いない。「インターネットを毎日の生活でシンプルに扱うために、みんなに喜んでもらえるシステムをつくりたい」という創業者の純粋な思いに牽引されて――。
(注釈)
*株式会社インテリジェント・コスモス研究機構(略称ICR)=産・学・官連携プロジェクトを実現するための拠点。未来型の産業社会実現に向けて、東北地方が日本の1つの頭脳として多様な産業を創出することを目指して1989年に設立。出資元は宮城県、仙台市、東北電力など226法人。
**正式には「個人情報の保護に関する法律」
取材日 2011年2月