(写真提供:蔵王ロープウェイ/2点とも)

樹氷の造形美が織りなすウインターシーズンの幻想回廊

[山形県-山形市]

 蔵王の「樹氷」は、「スノーモンスター」とも呼ばれ、その幻想的な風景は、国内のみならず、海外からの観光客の間でも人気が高まっています。
 樹氷は、そのときどきの風向きや積雪の量によって形が変わるため、同じものは2つとない、巨大な彫刻作品ともいえる自然の造形美が魅力です。
 なかでも、蔵王温泉スキー場は、ロープウェイに乗って気軽に樹氷を見に行くことができるスポットとして知られています。
 樹氷観賞の始発駅となる蔵王ロープウェイ蔵王山麓駅を訪ねました。

蔵王山麓駅

樹氷の見頃は毎年2月

 樹氷とは、奥羽山脈のアオモリトドマツが分布しているエリアの一部に見られる特異な着氷雪現象です。アオモリトドマツの葉に水滴が付いて凍り付き、そこに雪が降り積もることが繰り返され、樹氷が育ちます。
 「山形蔵王の樹氷が広く一般に知られるようになったのは、1921年に、慶応大学山岳部の教授らが厳冬期の蔵王を初踏破し、紀行文と写真を年報『登高行』に掲載したことがきっかけだと言われています」と語る蔵王ロープウェイの取締役・工藤利彦さん。
 蔵王山麓駅長の堀川博之さんによると、「いちばんの見頃は毎年2月です。樹氷が最も大きく成長する時期で、この時期になると“蔵王樹氷群”と呼ばれる景色が広がる状態になります」ということで、2月は外せない月と言えます。

(写真提供:蔵王ロープウェイ)

(写真提供:蔵王ロープウェイ)

【樹氷ができるまで】

ライトアップが人気

 「晴れ上がった青空とまぶしい白さの樹氷も見応えがありますが、日没後のライトアップも人気です。2019年は3月3日までライトアップしています」と工藤さん。
 蔵王ロープウェイは、蔵王山麓駅を出発し、樹氷高原駅で乗り換え、地蔵山頂駅までの約800mの標高差を往来しています。山麓近くの樹氷は小さめでも、上に登っていくに連れ、樹氷が大きくなっていく姿も見どころのようです。
 また、暖房の効いた雪上車に乗り込んで樹氷群を間近で見ることができる、「樹氷幻想回廊ツアー」も話題になっています。
 堀川さんによると、すぐそばで見る樹氷はまさに「モンスター」が立っているかのような迫力があると言います。
 「17時から20時まで、1時間ごとに運行しています。蔵王山麓駅からロープウェイで樹氷高原駅まで行き、そこから山頂方面へ雪上車でライトアップ観賞ポイントをぐるっと回るコースを設定していますから、壮観な樹氷を楽しむことができます」

山頂レストランから見るライトアップされた樹氷

山頂レストランから見るライトアップされた樹氷

雪上車(ナイトクルーザー号)

雪上車(ナイトクルーザー号)

(写真提供:蔵王ロープウェイ/2点とも)

【ライトアップされた樹氷】

蔵王文学のみち

 樹氷鑑賞を目的とした観光客は、比較的県外からの方が多い傾向にありましたが、山形県が冬の蔵王の魅力を直接台湾へ売り込むなど、行政によるインバウンド対策が奏功し、最近は訪日外国人観光客が増えているといいます。
 また、蔵王ロープウェイが位置する蔵王温泉一帯は、山形駅や山形蔵王ICからのアクセスもよく、温泉入浴施設も多いことから、その優位性を生かし、春以降はトレッキング、秋は紅葉と、通年観光にも注力しています。
 現在、蔵王温泉協会では、散歩やトレッキングを楽しみながら、山形県出身の昭和を代表する歌人・斎藤茂吉氏の歌碑めぐりを楽しむプロジェクトが進められています。『歌人 斎藤茂吉 蔵王文学のみち』と題し、蔵王温泉一帯に20基の茂吉の歌碑が建っています。蔵王山麓駅のそばにも、18番目歌碑がありました。
 「このプロジェクトでは、併せて春に桜の花も楽しめるよう、桜の植樹も進めています。山形市内から蔵王温泉までの沿道に千本桜の回廊をつくりましょうと2年ほど前から進めています」と工藤さんは、将来に向けた計画に思いを馳せています。
 冬の樹氷と並ぶ新しい見どころが生まれ、四季を通して、たくさんの来訪者と地元の人々の笑顔咲く日が待ち遠しいところです。

「湯の歌碑18 」歌人 斎藤茂吉の歌が刻まれた歌碑

「湯の歌碑18 」歌人 斎藤茂吉の歌が刻まれた歌碑

ここにして蔵王の山はあら山と
常立ちわたる雲見つつをり

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